数分後、レストランの制服に着替えた先ほどの男が飲み物と前菜らしきものを運んできた。従業員がいっぱいいるわけではないらしい。この感じだとこの男とシェフの２名だろうか。

　「アペタイザーは地元産砂サボテンと川エビのマリネでございます。砂漠に住んでいる昆虫もおつなものなのですが、やはりお客様の中には虫は食べないと言われる方もございますので、無難な川エビにしています。」

　やはりサボテンが来たか、しかし川エビは珍しいかも知れない、俺は問いかけた。
　「川エビもドゥーンで採れるんですか。砂漠ばかりで川なんかないですよね。」
　「はい、ほとんど砂漠なんですが、小さい川もあるにはあるんですよ。そこでごく少量の川えびが採れます。場所は秘密で教えられませんのでご勘弁ください。」

　これは貴重な地元食材かもしれない。しかし採れる量が少ないとなると会社としてはどうだろうか。アペタイザーは、砂漠だらけの、しかも人口も少ない惑星であることを考えると、まあまあの味であった。すごいというほどではない。その後の料理もおいしくはあったが、珍しい食材はなく、食材はおそらく冷凍であろうと思われた。