ヒーラーの憂鬱

 最初は、会社の休日に町中をぶらぶらし、障害や病気の人がいると片っ端から治していった。しかしこれには限界があった。休日にすれ違う人の数はたかが知れている。やはり、自分のところへ来てもらう必要があった。

 俺は、休日に公民館を借りて診療所を開くことにした。さすがに何でも治しますとは言えないので「無料病気相談」という看板を出して、人を待つことにした。最初は訪れる人も怪訝な表情で、無料なら試してみるかといった感じだったし、相談と言いつつもあいさつ程度で何かするわけでもないため、時間の無駄だったと腹を立てて帰っていく人がほとんどだった。しかし、時間の差こそあれ、みんな病気が治っていくので、徐々にうわさが広がり、休日には行列ができるようになった。
 この行列が厄介だった。公民館からは、近所の迷惑になるため、別の場所でやってくれとクレームが入った。また、行列が長くなると、最後の方は夕方になっても治療ができないという事態となり、待っている人からも遅いとクレームが入るようになった。

 俺は、町の体育館を借りることにした。駐車場が広く、体育館のまわりに余裕もあるため、行列の問題は解消された。しかし土日体育館をまるごと借りるのはかなり金銭負担となったため、みんなから相談料をもらうことにした。
 この相談料が厄介だった。自分一人でお金をもらいつつ、何か一言二言話しつつ、ジグソーパズルを完成させるのはかなりの負担となっていった。また、評判を聞きつけて、行列はさらに伸び、治療は深夜に及ぶこともあった。効率化しないと自分が持たないと感じていた。

 俺は、アルバイトの受付係とアシスタントを雇うことにした。受付係でお金をもらい、アシスタントが問診票を書かせ、その間にジグソーパズルを完成させるという作戦だ。実際の会話は適当に済ませる。これでかなり効率が良くなった。
 しかしアルバイトを雇ったことでまた新たな厄介事が発生した。お金の管理が必要となってしまったのだ。相談料をもらうだけなら、収入だけで簡単だが、体育館の使用料とアルバイト代を払うことになると領収書などの管理も必要となり、経理担当を雇わざるを得なくなったのだ。
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