ヒーラーの憂鬱

     ヒーラーの憂鬱
                           -修.

 俺がヒーラーとして目覚めたのは23歳のときだった。普通の会社員としてバス通勤していた俺は、いつも乗ってくる松葉杖をついた女性が気になっていた。そしてある日、その女性を見つめていると、突然、彼女の生涯と謎のジグソーパズルが頭に浮かんできた。彼女は先天的に足に問題を抱えており、松葉杖が手放せないこと、ある会社に障害者として勤めていること、彼女のいろいろな経験を一瞬で悟った。ジグソーパズルのほうは何か意味のある絵柄があるわけではなく、一つ一つのピースを見分けることもできなかったが、いくつかのピースがはまっておらず、外に散らばったままとなっているイメージだった。
 俺は、彼女の生涯をすべて知ったことに驚きつつも、当然のこととして残りのピースをジグソーパズルにはめ込みたいと願った。するとジグソーパズルは完成し、その日はそれ以上何もなかった。
 半年後、彼女は、多少びっこは残るものの松葉杖なしでバスに乗ってきたのを見て、俺はどうも自分が彼女の足を直したらしいと気づいた。その後、誰かを深く見つめると、その人の生涯とジグソーパズルが見えるようになった。その人が健康だとジグソーパズルは完成しており、何かしら障害や病気を抱えているとピースがはまっていないようだ。
 期せずして俺はどんな障害も病気も治せるヒーラーとなっていた。俺はこの能力は神から与えられた力だと感謝し、世間の障害・病気をすべて治すことが自分の使命だと悟った。
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