<工学的SFアプローチ講座> パワードスーツはいらない!

   **3** 機能上からのアプローチ

 「物を破壊することは簡単である。しかし、卵を割らずに掴めるようになるには、相当の訓練を必要とする」当然である。でなければ、何がパワードスーツかわからなくなってしまう。では、パワードスーツを着るとスーパーマンになれるか?答えは否である。

 結論から言えば、パワードスーツは決して人間より速い動きはできない。つまり、車を持ち上げることはできても車を飛び越える(脚力で)ことも、車より速く走ることさえできない。(ボトムズみたいなのは話が別)

 これは、いわゆる「天は二物を与えず」であると言えよう。(さらに言えば「殺虫パンチ」に負けた「滝沢国電パンチ」であると言えよう。)なぜか?それは、パワードスーツの動きの特徴であるフィードバック機構に原因がある。

 例えば、中の人間が素早く腕を持ち上げようとすると、重たい装甲外骨格を持ち上げるモーターが(人工筋肉ができても同じこと)一瞬遅れて、しかも常に腕でスイッチが押された状態でのみ動く。(車のパワステを思い浮かべてもらえれば結構)

 この遅れは絶対である。もし、これがなければパワードスーツは「レレレのおじさん」になってしまう。

 ここで「神経から直接情報を得ればいい」というのはナンセンスである。それでは設定からはずれる。またそんなことができるなら、ロボットを遠隔操作した方が安全である。

 さらに、それができると、確かに早くなるかもしれないが、無意識のうちに自分の腕が脱臼することもあるかもしれない。(だんだんこじつけが・・・・・・)とにかく、パワードスーツが恐るべきスピードで動きまわる光景はSFの中といえども非現実的であるといえよう。

 ★つけたし

 「車を飛び越えるなんて、ブースタージェットでもつければ簡単!」などと得意顔のあなたQSF編集委員会をなめてはいけない!

 パワードスーツでなければ、ブースタージェットが取り付けられないわけではない。つまり、人が背中にジェットをつければ用をなすのである。

 第一、ブースタージェットを付けるなどというのは二次的な問題であり、今はその存在自体を云々しているのである。あしからず。
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