<工学的SFアプローチ講座> パワードスーツはいらない!

   **2** 材料

 マシンガンの弾丸をはじき返し、レーザービームの熱を拡散する強靭な装甲板。はたしてそれはバズーカ砲に耐えられるだろうか。このセクションはそんな疑問から出発する。

 そもそもパワードスーツは人間が身につけるものだし、また兵器である以上、その装甲板は軽薄・強固であることが必要とされる。ではどの程度必要か。

 それは使用状態によって変わるが、今、パワードスーツが主に対人間・対局地制圧用だとすれば、それは戦車と歩兵の両方の機能に匹敵するぐらいは必要であろう。「パワードスーツを作る程の技術(機構だけでも)があれば装甲なんて・・・」と言うのはしろうとである。(もしくは文系である。)

 金属材料の強度はたいして発達するものではない。唯一期待できるのは「猫のひげ結晶」と言われる完全無欠、つまり全ての原子が一つずつ規則正しく並んだ結晶である(SFではない)これは現在の同じ金属の10倍の引張強さを誇る。

 この「猫のひげ結晶」を使うと、パワードスーツの装甲板は約20ミリ程度で済みそうである。少なくとも破られはしない。

 しかし、ここで問題は、破壊力は力積で与えられるということである。つまり、ボクサーのパンチと空手の突きの違いである。装甲はもっても、中の人間はもたない。

 かくして、装甲板は厚さを要求される。しかしパワードスーツが外骨格である以上、そうそう厚くもできないし・・・、超高性能な防振ゴムを緩衝材にして、その内側にエアコンをつけて、さらに内側に肌ざわりのよいベンベルグ裏地(つまりキュプラですな)をつけて・・・。

 う~ん、50ミリで足りるだろうか?これを着る為には、ガニマタで、肩幅の広い・・・、猿が・・・。

 ★補注
本講では材料について金属材料にしか触れなかったが、他に複合材料、セラミック、プラスチックなどもあるので簡単に触れておく。

(1)複合材料 - グラスファイバーやカーボンファイバーのことである。コストが高い。同じ強さの板を作ると、鉄の百~千倍の価格となる。(ホントです)手間がかかり大量生産が難しい。

(2)セラミック - 軽い、固い、耐熱性がある。が、セラミックが現在有望とされるのは、高温時でも強いからである。(鉄は溶ける)常温では金属と比べて、それほど勝っているとはいえない。さらにセラミックは硬いが故にあとで削ったりできないという重大な欠点がある。

(3)プラスチック-有望である。しかし金属以上の性質を備え、さらに金属より安いプラスチックは当分できないだろうと筆者は考える。
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