パイロキネシスト

 俺は、翌日、田舎町の山手にある公園に車で出かけた。田舎には、山を切り開いて作られた公園がよくある。車でしか行けず、いっても草ぼうぼうの野球のグラウンドと、申し訳程度の遊具があるくらいで、平日は人が居るのを見かけたことがない。居たとても、ベンチでカップルがいちゃいちゃしているくらいだ。

 ここなら人目を気にすることなく、発火能力を試すことができる。

 俺はまず、火炎放射器から出るような細長い炎をイメージしてみた。すると、手の先から1mくらいのところから、長さ数十mの炎が現れた。なるほど・・・。

 少し実験して分かったことだが、炎の大きさによって、自分が熱くない程度に離れた位置に現れるようだ。なんと親切な・・・。

 そう言えば、アニメに出てくる魔法使いのように、火球を飛ばすこともできるのだろうか。しかし、やみくもに撃つと山火事になるかもしれない。俺は辺りを見渡した。すると、公園の一角に、テニスの壁打ち用のコンクリート壁を発見した。
「これこれ・・・」

 俺は、壁に向かって火球が飛んでいく映像をイメージした。すると、これもイメージ通りに、火球がコンクリート壁にぶつかって、焦げ跡を残した。
「いろいろできるな・・・」

 しかし、よく考えると、この能力って物理法則を全く無視している。そもそも何も燃えるものがないところに、突然、火が出るのもおかしいが、それが燃え続けるのもおかしいし、俺のイメージで形が変わるのもおかしい。おかしいことだらけだ・・・。

 また、魔法なら、使いすぎると魔力切れになるっていうのが定番だが、この能力にも何か限界があるのだろうか。そう考えた俺は、この能力の限界が試したくなった。

「うーん・・・」
 俺は、過去のアニメや映画で出てきた、大火力の攻撃シーンを思い出していた。人工衛星や宇宙船から発射される強力なビーム、広げた手のひらから出される念動波エネルギー・・・。共通して言えることは、どれも惑星でも破壊しそうな勢いっていうことだ。

「空に向けて特大の奴を撃ってみるか・・・」
 俺は、巨大な火柱が地球から宇宙空間に伸びていく画像をイメージした。しかし、何かが物足らない。

 そうだ、何か名前を付けて、それを大声で叫ばないと発射した感じが出ないんだ。どんな名前にしようか・・・、俺は少し考えてみたが、途中でどうでもよくなった。

「きょだいひばしらぁーーー!!!」
 俺が見上げる遥か上空に、巨大な円形の白色の炎が現れた。大きさは分からないが、直径1000mくらいはあるのではないだろうか。そして、はるか上空にもかかわらず、かなりの輻射熱を感じられるほど強烈だった。

「おおおっ・・・!」
 俺は思わず声を上げた。そして数秒後、巨大な円はだんだん小さくなり、最後には小さな光点となり、消えていった。なぜ円形だったのか? 火柱を真下から見るとしたら、円形が正解なのかもしれない。

 巨大な火柱に満足した俺は、この能力の使い道について考え始めた。タバコを吸うならライター代わりにはなるが、今や電子タバコの時代だし・・・。バーベキューの火起こしでバーナー代わりにもなるが、人目があるだろう。熊が出たときの威嚇に使えるが、これは山火事の危険がある、となると・・・。

 家のガス代の節約も考えたが、やかんを片手でぶら下げて、もう一方の手から火を出しつつ、湯が湧くまでキープというのもだるい・・・。
「うーん」
 俺はうなってしまった。使い道がない。まあ、そんなものかもしれない。超能力がそんなに都合よく使い倒せることもないか・・・。

 俺は帰りにコンビニで買い物を済ませ、自宅に帰った。
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