メタル・ベンディング・パーティー

Neo Lunatics 39号 (1984年2月6日発行) 掲載

   メタル・ベンディング・パーティー
                           -修.

 土曜の夜のゴールデンアワー。今、まさに、テレビ、ラジオを通じて「メタル・ベンディング・パーティー」が始まろうとしていた。「メタル・ベンディング・パーティー」、それは「超能力は誰にでもある。」というキャッチフレーズのもとに人々が集まり、指導者と共に念じることにより、スプーン、フォークがいとも簡単に曲げられるようになるというパーティーであった。そして、今夜はその最大の権威、月芳竜浦教授の指導のもとで、「メタル・ベンディング・パーティー」を全国ネットで放送しようという一大イベントであった。

 「さぁ、みなさん念じて下さい。金属を溶かすつもりで念じて下さい。そして、一緒に叫んで下さい。曲がれ!曲がれ!」スタジオから歓声が上がる。「キャー」、「うそぉー」、「なんでぇー」、「えー」。人々は自分の手の曲がったスプーンに目を白黒させながら、思い思いの表情で驚いていた。そして、そろそろすべての人がスプーンを曲げ終わったころ、月芳教授がしずしずとマイクをとり、威厳をたたえた顔で説明を始めた。
 「どうです。みなさん、あなたも曲げることができたことと思います。人間にはまだまだ科学では計り知ることのできない能力があるのです。そして、このスプーンを曲げる力が拡大され、将来、平和利用への道が開ければ、この功績の成す・・・」
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