デリバリー・エンジェル

                          -修.

「いったい、どこから入ってきたんだ・・・」
 俺の暮らすワンルームマンションの玄関に立っていたのは、ひげを生やした、浅黒いマッチョだった。筋肉を見せびらかす白いタンクトップ、ピッチピチのタイツ、身長は175cm超、年齢は50歳超えではないだろうか。なぜ、こんなマッチョなおじさんが部屋の中にいるんだ・・・

「呼び出しといてそれはないだろう。俺はお前さんが注文したエンジェルだぜ!」
「えっ・・・」
 確かにエンジェルをオーダーしたが・・・

 30分程前のこと、俺がベッドに寝転がって、見るとはなくSNSを見ていると、見慣れないポストが表示された。

 ポストには、ドレープたっぷりの白いドレスを着た少女が手を差し伸べていた。頭には天使らしき白い輪っかも浮かんでいる。
「デリバリー・エンジェル
 神の御言葉を伝え、幸運をもたらす、デリバリー・エンジェルをあなたのもとへ
 今ならお試し無料!
 オーダーはこちらへ」

「なんだ、これは・・・」
 まあ、30代独身サラリーマンの俺が、普段はエロいサイトなど見ていないと言えば嘘になる。だから、行動ターゲット広告としてエロいサービスの宣伝が表示されるのは仕方ないことだ。しかし、SNSでこんな意味深なポストが流れてくるのは始めてだ。

 名前と画像からすると、デリヘルのようなものか。しかし、「神の御言葉を伝え、幸運をもたらす」とはなんだろう。エロいサービスではないのか。

 30代となったものの、会社も私生活も停滞気味だ。この休日に、することもなくベッドに寝転がってSNSを見ているのが、そのことを最もよく表しているだろう。俺は、現状を打破すべく、オーダーしてみることにした。どうせ、タダだ。

「あのう、あなたがデリバリー・エンジェルのエンジェルさんでしょうか?」
「そうだよ」
「もっと、若くてかわいい女性が来るものとばかり思っていましたので・・・」
「あー、あのポストな。下のほうに小さく、画像はイメージですって書いてあっただろ。まあ、気づかないか・・・」
 俺は、オーダーする前に隅々まで読んでおくべきだったと後悔した。

「そうだ、頭の輪っかもないような・・・」
「えっ、よく見てみろ!」
 おじさんは、ポマードを塗りたくったオールバックの髪を指さした。そこには、確かに天使の輪っかが光っていた。
「そうきたか・・・」俺は心の中でつぶやいた。

 落ち込んでいる俺をよそに、おじさんエンジェルが話し出した。
「初回だから説明しておくな。残念ながら、俺はエンジェルだ。広告通り、神の御言葉を伝え、幸運をもたらす。3日間、お前と一緒に行動することになる。」
「3日間、ずっと一緒なんですか・・」
「そうだ、でも心配するな。他の奴から俺は見えない」
 いやいや、俺は3日間ずっと、このマッチョおじさんを見ながら過ごすことになるじゃないか。

「3日間も、ですか?」
「あー、正確には、俺の仕事は9時5時なので、夕方には帰る。最近はエンジェル界も働き方改革でな・・・」
 どうやら、5時以降は一人で過ごせそうだ。
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