ダブルカウンター

 俺は一応の結論に満足し、駅への道を急いだ。しかし、駅前の広場に差し掛かったところで大変な失敗をしてしまった。歩道の段差でつまずいたのだ。

 俺はバランスを失い、宙を舞った。そして、前に差し出した手が地面に触れようとした瞬間、俺は一瞬空に向かって飛びあがっていた。高さは1mくらいだろうか・・・。

 そして、次の瞬間また地面が近づいてきた。そしてぶつかると思った瞬間、再び空に向かって飛びあがった。今度はかなり長い間上昇した。広場が見渡せるほどの高さだった。俺は腕を振り回して、なんとか体を起こし、足が下になるようにした。

 そして、再び落ち始めた。体勢は立て直したものの、この高さから落ちたら、骨折は間違いないだろう。
「あーーーーー」
 俺は恐怖のあまり叫んでいた。そして、また地面が近づき、今度はさらに上昇した。しかし、落下と上昇を何度か繰り返すうちに、俺はだんだん冷静さを取り戻してきた。

 これは、俺の能力が発現しているに違いない。俺は地球に向かって落ちていって、ぶつかるタイミングで2倍の速度で離れていくことを繰り返しているのか・・・。

 上昇する高度はだんだん上がってきて、すでに周辺の山々と同じくらいになっている。地面に戻る時間も、もう10秒は超えているのではないだろうか。この上下運動はいったいいつまで続くのか・・・。

 このまま高度が上がって呼吸困難で死んでしまうのか、それともどこかで空気抵抗と釣り合って高度が上がらなくなるのか。いやその場合でも、止める手段がなければ、俺が餓死するまで続くことになるのだろうか・・・。


 そして何度か上下運動を繰り返したとき、俺はふとあることに気がついた。

 風切り音がしていない。周りは爆風が吹いているのと同じだから轟音がするはずなのだが・・・。そういえば、普通に眼も開けていられるじゃないか・・・。そうか、空気の分子が俺にぶつかる直前で2倍の速度で跳ね返っている?

 ということは・・・。

 俺の脳裏に「グランドエフェクト」という言葉が浮かんだ。俺の下では下降気流が生じて空気が圧縮される。俺の下に空気の塊を作ることができれば、速度が落ちて、落下時のクッションになるのではないか?

 どうせ他に手もない、駄目で元々だ。

 俺は次に上昇しきったところで、腕をぐるぐる回して、腹ばいの姿勢になった。そして、手足をできるだけ広げ、「大」の字になった。

 そして落下が始まると明らかに落下速度が遅くなっていた。そして、地面に近づいた瞬間、今までとは全く違う現象が起きた。俺が落ちるであろう場所の回りには、大きな土ぼこりが舞っていた。そして、地上5mくらいから急速に速度が落ち始め、最後は腹ばいのまま地面にソフトランディングすることができた。

「助かった・・・」
 落下速度は0にはならなかったが、低速だと反発はしないようだった。苦肉の策だったが、なんとか命拾いすることができた。

 俺は、二度とつまずいたり、飛び上がったりしないよう、気をつけなければと心に誓い、駅舎へ慎重に歩いていった。

おしまい
2/2ページ
スキ