ダブルカウンター
-修.
不思議な現象に気づいたのは、大学の友人と卓球をしているときだった。
彼は高校のとき卓球部に居たらしく、俺は完全にもてあそばれていた。
彼が繰り出すカットは、バックスピンあり、カーブスピンありと変化に富んでいた。俺も中学時代は卓球部だったので、まあまあいい勝負になるかと思っていたが、あまりの多彩なカットに有効な反撃を加えることができていなかった。
そして、彼が放った最後の一球はとびきり強烈なカーブスピンだった。俺は、フォアハンドで打ち返せると思ってストロークに入ったが、球は俺の前で急激に左に曲がって、俺の体の中央へ向かってきた。俺は、とっさにラケットを移動させたが、球に触ることさえできなかった。
しかし、なぜか、ピンポン玉は勢いよくはじかれて、倍の速度で相手コートの上を飛んでいった。
友人は気楽にガッツポーズで「はい、ジュース奢りね!」と言っていたが、俺はラケットに当たってないはずなのに・・・という思いが頭を離れなかった。
数日後、俺はさらに不思議な現象に遭遇した。
大学に行くため、駅へ続く歩道を歩いていると、向こうからスマホを操作しながら、ゆっくり自転車を漕いでくる男子高校生が見えた。いわゆる「ながらスマホ」という奴だが、ほとんど画面から目を離そうとしない。速度こそ遅いが、全然前を見ることなく走って来られるのは危なくて仕方ない。
俺は注意してトラブルになるのも嫌なので、歩道の端によけることにした。だが、あろうことか、男子高校生の方もふらふらしながら俺の方に向かってきた。
「あぶない!」
俺は声をあげたが、すでに遅かった。自転車は俺に衝突した・・・はずだった。俺は、後ろにはじき飛ばされたように感じた。俺は、自転車を見て身構えていたので、数歩後ろに下がったものの、コケることなく持ちこたえた。
俺は後ろに下がりながら、自転車の動きを見ていた。通常なら、俺にぶつかった高校生は、足を着いてその場で止まるか、転倒するだろう。しかし、俺の想像に反して、自転車はこっちに向かってくる時と同じくらいの速度でバックしていた。
自転車がバックするとどうなるか? 高校生の足はペダルから外れ、1mほどバックしたのち、転倒した。高校生はすぐに立ち上がったが、何が起こったのか理解できていないようだった。どうやら俺にぶつかったことさえ認識していないようだ。
いや、しかし・・・。少し冷静になった俺は、どこも痛くないことに気がついた。ジーンズにもぶつかった汚れやタイヤ跡はない。本当にぶつかったのだろうか?
俺は後ろ向きに数歩歩いて止まったし、自転車も後ろ向きに戻って行って転倒した。まるで磁石の同極を近づけたように、俺と自転車が反発しているような感じだ。しかも、どちらも近づいてくる自転車と同じくらいの速度だったのではないか。つまりは2倍の速度差になったということか・・・。
俺は、先日の友人との卓球の最後の一打を思い出した。あの時も、ピンポン玉は2倍の速度で相手コートの上空へ飛んでいった。どちらも2倍・・・。
しかし、卓球のときはピンポン玉だけが2倍の速度で飛び去ったが、今回は双方が同じ速度で離れていった。この差はなんなのか・・・。
俺は物理の授業を思い出した。運動量保存の法則だっけ?
ピンポン玉は俺の体重よりはるかに軽いから、ピンポン玉がはじき返されたのは分かる。しかし、なぜ速度が2倍になったのだろうか。運動量が2倍に増えたということか? そもそも当たった感覚もなかったのだが・・・。
運動量が2倍に増えたと考えると、今回の自転車のケースも分からないでもない。俺と男子高校生が同じくらいの体重だったから、それぞれが元の速度で離れていったということか・・・。
しかし、ぶつかってないのに反発して、しかも運動量が2倍になるって、物理法則を大無視した現象じゃないか・・・。
俺はケーススタディを行ってみた。
もし銃で撃たれても、俺の方が銃弾よりはるかに重いから、銃弾を跳ね返すことになるのか。しかも、無傷で・・・。これはすごい能力と言えるのではないだろうか。ナイフによる攻撃も同じかもしれない。無敵じゃないか!
いやいや、もし自動車がぶつかってきた場合、俺の方が圧倒的に軽いので、俺はぶつかってきた自動車の速度以上の速度で吹き飛ばされるのではないか。吹き飛ばされた後がどうなるのか分からないが、少なくとも無傷では済みそうにない。
無敵というのは時期尚早だった。少なくとも、車には気を付けよう・・・。
不思議な現象に気づいたのは、大学の友人と卓球をしているときだった。
彼は高校のとき卓球部に居たらしく、俺は完全にもてあそばれていた。
彼が繰り出すカットは、バックスピンあり、カーブスピンありと変化に富んでいた。俺も中学時代は卓球部だったので、まあまあいい勝負になるかと思っていたが、あまりの多彩なカットに有効な反撃を加えることができていなかった。
そして、彼が放った最後の一球はとびきり強烈なカーブスピンだった。俺は、フォアハンドで打ち返せると思ってストロークに入ったが、球は俺の前で急激に左に曲がって、俺の体の中央へ向かってきた。俺は、とっさにラケットを移動させたが、球に触ることさえできなかった。
しかし、なぜか、ピンポン玉は勢いよくはじかれて、倍の速度で相手コートの上を飛んでいった。
友人は気楽にガッツポーズで「はい、ジュース奢りね!」と言っていたが、俺はラケットに当たってないはずなのに・・・という思いが頭を離れなかった。
数日後、俺はさらに不思議な現象に遭遇した。
大学に行くため、駅へ続く歩道を歩いていると、向こうからスマホを操作しながら、ゆっくり自転車を漕いでくる男子高校生が見えた。いわゆる「ながらスマホ」という奴だが、ほとんど画面から目を離そうとしない。速度こそ遅いが、全然前を見ることなく走って来られるのは危なくて仕方ない。
俺は注意してトラブルになるのも嫌なので、歩道の端によけることにした。だが、あろうことか、男子高校生の方もふらふらしながら俺の方に向かってきた。
「あぶない!」
俺は声をあげたが、すでに遅かった。自転車は俺に衝突した・・・はずだった。俺は、後ろにはじき飛ばされたように感じた。俺は、自転車を見て身構えていたので、数歩後ろに下がったものの、コケることなく持ちこたえた。
俺は後ろに下がりながら、自転車の動きを見ていた。通常なら、俺にぶつかった高校生は、足を着いてその場で止まるか、転倒するだろう。しかし、俺の想像に反して、自転車はこっちに向かってくる時と同じくらいの速度でバックしていた。
自転車がバックするとどうなるか? 高校生の足はペダルから外れ、1mほどバックしたのち、転倒した。高校生はすぐに立ち上がったが、何が起こったのか理解できていないようだった。どうやら俺にぶつかったことさえ認識していないようだ。
いや、しかし・・・。少し冷静になった俺は、どこも痛くないことに気がついた。ジーンズにもぶつかった汚れやタイヤ跡はない。本当にぶつかったのだろうか?
俺は後ろ向きに数歩歩いて止まったし、自転車も後ろ向きに戻って行って転倒した。まるで磁石の同極を近づけたように、俺と自転車が反発しているような感じだ。しかも、どちらも近づいてくる自転車と同じくらいの速度だったのではないか。つまりは2倍の速度差になったということか・・・。
俺は、先日の友人との卓球の最後の一打を思い出した。あの時も、ピンポン玉は2倍の速度で相手コートの上空へ飛んでいった。どちらも2倍・・・。
しかし、卓球のときはピンポン玉だけが2倍の速度で飛び去ったが、今回は双方が同じ速度で離れていった。この差はなんなのか・・・。
俺は物理の授業を思い出した。運動量保存の法則だっけ?
ピンポン玉は俺の体重よりはるかに軽いから、ピンポン玉がはじき返されたのは分かる。しかし、なぜ速度が2倍になったのだろうか。運動量が2倍に増えたということか? そもそも当たった感覚もなかったのだが・・・。
運動量が2倍に増えたと考えると、今回の自転車のケースも分からないでもない。俺と男子高校生が同じくらいの体重だったから、それぞれが元の速度で離れていったということか・・・。
しかし、ぶつかってないのに反発して、しかも運動量が2倍になるって、物理法則を大無視した現象じゃないか・・・。
俺はケーススタディを行ってみた。
もし銃で撃たれても、俺の方が銃弾よりはるかに重いから、銃弾を跳ね返すことになるのか。しかも、無傷で・・・。これはすごい能力と言えるのではないだろうか。ナイフによる攻撃も同じかもしれない。無敵じゃないか!
いやいや、もし自動車がぶつかってきた場合、俺の方が圧倒的に軽いので、俺はぶつかってきた自動車の速度以上の速度で吹き飛ばされるのではないか。吹き飛ばされた後がどうなるのか分からないが、少なくとも無傷では済みそうにない。
無敵というのは時期尚早だった。少なくとも、車には気を付けよう・・・。
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