【バランシング・ダンジョン】下り階段

「フロアボスなしのボーナスフロアですかね?」
 と、アーチャー。
「いや、このバランシング・ダンジョンに限って、そんな甘い話はないでしょう」
 俺は幾度となく辛酸を舐めさせられている。ボーナスフロアなんてあるはずがない・・・
 みんなも同じ考えのようで、さっさと進もうと言い出すメンバーはいなかった。

「近づいたら、突然実体化してくるとか・・・」
「パーティーに重装備のプロテクターが居れば、一撃でやられることはないから、じわじわ近づいてみるって方法も取れますけどね」
 と、リーダー。
「いや、もしボスキャラが居るなら、床には攻撃範囲を示す赤いラインが現れるはずです。ラインがないところを見ると、本当にいないかもしれませんね・・・」
 俺はこれまで前衛として戦ってきた経験から意見を述べた。
「・・・」
 皆、考え込んでしまった。

 しかし、ヒーラーが沈黙を破った。
「そうだ、これはボスがいない代わりに、トラップだらけのフロアなんじゃないですか?」
「あー、可能性はありますね。どこかを踏むと横から矢が飛んできたり、落とし穴があったり・・・」
 バランシング・ダンジョンでは落とし穴に落ちると、下のフロアに落ちるのではなく、天井から同じフロアに落ちてきて、大ダメージを食らうことになる。

「じゃあその線で、剣でフロアにトラップがないか確かめながら、進んでみましょうかね」
 言うまでもなく、その役は前衛の俺が担うべきものだ。

 俺は、ふたつの剣を交互に床に突き刺しながら、一歩一歩慎重に前に進み始めた。
「トラップらしきものはないですね・・・」
 俺は入り口付近に立ち止まったまま見つめている他のメンバーに話しかけた。

 そして、一段高くなったステージに近づき、同じように剣をステージに突き立てた。その瞬間、ステージがめくり上がった。そして、めくり上がった下には攻撃範囲を示す赤いラインが現れた。

「ステージ自体がフロアボスだ!」
 俺はメンバーに叫んだ。それは、真ん中が階段の形にくり抜かれた、真四角の平らな岩の魔物だった。

 もし、フロアボスがいないと思って、パーティーが不用意にステージに上がっていれば、全滅した可能性もあっただろう。しかし、幸い、俺でさえ攻撃範囲には入っておらず、かろうじて赤いラインの外に居る。

 俺たちは、ボスキャラの攻撃範囲外から攻撃を繰り返し、難なくフロアボスを攻略することができた。

 下り階段に偽装したフロアボスとは、トラップとしてはなかなか考えられたものだったが、バランシング・ダンジョンで何度となく死を経験し、慎重さを叩き込まれたメンバーにとっては恐れるものではなかった。

おしまい
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