時の墓標
コンソールに歩み寄り、まさに照合パネルにインターコムを押し当てようとした時、俺はコンソールの脇のテーブルに無造作に置かれた一冊のノートを見つけた。
それは整然としたオペレーションルームの雰囲気とは趣きを異にした、あちこちにしみのついた傷だらけのノートであった。俺はノートを手に取り拾い読みした。
それはフィアイーガの興亡の断面を物語る、一オペレーターの手記であった。
10数年前フィアイーガは、トレーダー達が語る通りの興隆をきわめていた。惑星の各都市は、この都市のシティコンピューターを中心とした通信ネットワークで結ばれ、あらゆる情報が全惑星で共通のものとなっていた。
そして最高の生産性、最も効率の良い開発が行なわれ、惑星全土へと文明が広がって行った。しかし、この時すでに都市の病は始まっていたのだ。それは当初は僅かな変異であった。
例えば、誰かの銀行口座から余分に金がおろされたとか、住民の記録に間違いが記入されているとか、それらは大都市であれば少なからず生じる間違いであった。ティコンピューターが介在していない都市であれば・・・。
原因の究明は秘密裏に、しかし徹底的に行なわれた。そしてその原因はまた僅かなものであった。シティコンピューターの膨大なプログラムの一部が変更され、おかしな数字が入ってしまうのだ。入るはずのない部分に・・・。
これらの一つ一つは取るに足らない僅かなバグだったが、シティコンピューターが複雑であるが故か、加速度的に増加していった。
そしてシティコンピューターのあまりの複雑さに本当の原因の究明が不可能なものとなっていると政府が気付いた時、すでに植民星フィアイーガ全土は崩壊へと向かっていた。
育つべき農作物は育たず、止まるべきシティコミューターは暴走し、あらゆる生産設備、あらゆる交通機関は麻ひし、人々は恐怖した。そして反乱が起こり、都市の崩壊は一瞬のうちに行なわれた。
それは整然としたオペレーションルームの雰囲気とは趣きを異にした、あちこちにしみのついた傷だらけのノートであった。俺はノートを手に取り拾い読みした。
それはフィアイーガの興亡の断面を物語る、一オペレーターの手記であった。
10数年前フィアイーガは、トレーダー達が語る通りの興隆をきわめていた。惑星の各都市は、この都市のシティコンピューターを中心とした通信ネットワークで結ばれ、あらゆる情報が全惑星で共通のものとなっていた。
そして最高の生産性、最も効率の良い開発が行なわれ、惑星全土へと文明が広がって行った。しかし、この時すでに都市の病は始まっていたのだ。それは当初は僅かな変異であった。
例えば、誰かの銀行口座から余分に金がおろされたとか、住民の記録に間違いが記入されているとか、それらは大都市であれば少なからず生じる間違いであった。ティコンピューターが介在していない都市であれば・・・。
原因の究明は秘密裏に、しかし徹底的に行なわれた。そしてその原因はまた僅かなものであった。シティコンピューターの膨大なプログラムの一部が変更され、おかしな数字が入ってしまうのだ。入るはずのない部分に・・・。
これらの一つ一つは取るに足らない僅かなバグだったが、シティコンピューターが複雑であるが故か、加速度的に増加していった。
そしてシティコンピューターのあまりの複雑さに本当の原因の究明が不可能なものとなっていると政府が気付いた時、すでに植民星フィアイーガ全土は崩壊へと向かっていた。
育つべき農作物は育たず、止まるべきシティコミューターは暴走し、あらゆる生産設備、あらゆる交通機関は麻ひし、人々は恐怖した。そして反乱が起こり、都市の崩壊は一瞬のうちに行なわれた。