時の墓標

 宇宙船の航行用コンピューターを再プログラムして流用されるシティコンピューターは、当然ながら外的影響の少ない宇宙船のほぼ中央に位置していた。

 そしてオペレーションルームへは宇宙船乗りであれば誰でも容易にたどり着くことが出来る。いや出来なければ宇宙に出ることは許可されない。その道のりは宇宙船の大きさ、形式に依らず一定のパターンを描くように定められていた。

 オペレーションルームのドアは表面の生々しい焦げ跡や引っ掻き傷にも拘らず未だに正常に動作していた。最も強固な材質のドアも、考えられる最も強固なロック機構も、10年の歳月にも外敵にも耐え、ドアの操作パネルには正常な動作状態を維持していることを示すグリーンのパイロットランプがほのかに点灯していた。

 シティコンピューターが生きている可能性は高い。植民星フィアイーガの崩壊の原因が判るかもしれない。俺はこの思いにわずかに興奮を覚えた。

 俺はロック機構を解除するために、インシュリンの投与でインジケーターがわずかに緑に染まっているインターコムを口元に近付け、グレートクエスト号を呼び出した。

 政府から特別に知らされた数十桁にも及ぶパスワードがなければ、ロック機構は解除することが出来ず、それはグレートクエスト号の航行用コンピューターに記憶させてあったからだ。
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