時の墓標

 地下はシェルターであっはずだ。植民星の首都には必ずシェルターが、設けられているものである。遠大な距離を踏破し、最後の燃料を消費して着陸した宇宙船を中心にして、都市は周辺部へとそのフロンティアを拡大していく。

 そして地面に半ばめりこんだ宇宙船は、その強固な外壁を利用してシェルターとしてそのまま残されていくものであり、このフィアイーガ星でもその習慣は履行されているはずであった。

 疫病、反乱、異常気象、いくら事前調査や人員選抜が綿密に行われても、それらは少なからず発生した。そして宇宙船は最後の人類の砦として、文明の火を絶やさない要として働くものであった。

 しかし携帯用ライトが照らし出す地下道の傷だらけの壁面は、このシェルターが全く役に立たなかったことを如実に物語っていた。

 地下一階程度の深さで水平となった地下道は壁面に限らず床も天井も至るところ、レーザービームにより焼かれた跡や、鈍器の削り取った生々しい傷が残っていた。俺は背中に寒いものを感じ、麻酔銃を構え直し、歩を進めた。
5/12ページ
スキ