時の墓標

 俺は何か叫びたいような踊り出したいような気分になり、このことを一刻も早く調査船グレートクエスト号に伝えるべく、アドレナリンを投与して、インジケーターの赤く染まったインターカムを口元へ運ぼうとした。

 そして俺は高揚した気分の中でふとおかしなことに気付いた。なぜインターコムはアドレナリンを投与しているのだ。こんなに興奮しているのに何故インシュリンを投与しないのだ。

 コンピューター、そうインターカムにも小さいながらコンピューターが内蔵されていたのだ。しかしいつ・・・。シティコンピューターとはやりとりをしていないはずだが・・・。

 ロック機構の解除。俺は思い当たった事実に恐怖し、インターコムを腕から乱暴にもぎ取った。インターコムに収容している薬品の量は微々たるもので全部が投与されても死ぬことはなかったが、失神ぐらいしたかもしれない。

 俺はインターカムの裏蓋を開け、慎重にコンピューターの制御を切った。そして一息ついたところでさらに重大な事実に思い当たった。ロック機構の解除の時、調査船グレートクエスト号のコンピューターも介在していなかったか?

 恐るべきことであった。調査船グレートクエスト号の航行用コンピューターが影響を受けているとすれば、着陸動作中のグレートクエスト号が危ない。俺はインターカムの、幸いにもコンピューターの助けなしで動作する通信機を動作させようとした。

 丁度その時、大地を揺るがす振動がこの強固なオペレーションルームに伝わった。操作パネルのインジケーターの幾つかが一斉に赤に変化した。
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