時の墓標

 俺は脅威と戦りつを覚えるとともに、予想もしなかった収穫に興奮した。それは超高度情報化社会の末路であった。こんな事件は全惑星連合のどこで発生してもおかしくなかったはずだ。

 むしろこの辺境で起こってくれたことは全惑星連合の他の惑星にとっては、影響が伝播しなかったことを喜ぶべきかも知れなかった。

 早く何か行動しなくては・・・。いてもたってもいられない気分だった。このことを母星に報告すれば調査は成功を納めたことになる。俺ははやる気持ちを押え、一刻も早くこのことをグレートクエスト号に報告すべく、高揚しながら先を読み進めた。

 ノートの先の方にはこの一連の現象の本当の原因について、一オペレーターとしての見解が記されていた。どうやらこの一連の現象は、それぞれが接続されたコンピューター間で伝染していく一種の電子パターンが原因のようであった。

 具体的には何か解らないがあたかも人間の思想が他人に伝わるように、コンピューターの一概念とでもいうべきパターンが伝わり、バグを伝染させていくようだ。

 俺は極度に興奮した。植民星フィアイーガはコンピューターの人格化、個性化の実物大の実験室と化していたのだ。これは近年、全惑星連合の学会のホープとなっている研究課題であった。植民星フィアイーガは崩壊したが、それが人類に及ぼす利益は莫大なものになるかも知れない。
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