時の墓標

パッションNo.7掲載

   時の墓標
                           -修.

 空一面にたれ込めた雲の下に廃墟がひろがっていた。長い年月の間にコンクリートの瓦礫の隙間にたまった塵には、申し訳程度に雑草が育ち、それらの雑草は吹き抜ける風になびいていた。

かつては人々の活気が溢れていたであろう建ち並ぶビル群は、或は朽ち果て、或は傾き、暗く沈んだ空の下で、自然の手の元へと戻ろうとしていた。

 「ひどいものだ。10年程の歳月がこれほどまでに都市を見る影もなく変えてしまうとは・・・。」
 大気圏突入での熱気がまだ完全に冷めきっていない短いタラップを降りながら、俺は一人つぶやいた。

 前哨艇は、かつては人々の憩いの場であったと思われる小さな公園のレンガ敷きの上に、ベンチや石像を避けて多少傾いた姿勢ではあるが無難に着地していた。

 今を遡ること10年余り、植民星フィアイーガが豊富な鉱物資源と肥沃な土地、そして海のために栄え、人口は一億人にも達し、興隆を極めていた。

 連合の首都からの10パーセクという隔たりのために文化や人の交流こそ少なかったが、片道3年の歳月をかけて往復するトレーダーは、その文化の一瞬の断面である工芸品や珍しい香料、薬そして何よりもその栄華を語る情報をもたらしていた。数々の惨劇を生み出した第3次植民政策の一環の中で、惑星フィアイーガは唯一最高の成果を治めた惑星であった。
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