太陽ヨット

 俺は急いで地上スタッフとも連絡を取り、原因を探った。考えられるのは、太陽光強度の低下・・・。
「何かが光を遮っている・・・? いったい何が・・・」
 俺は思い当たった。逆さトンボと太陽の間にあるもの、それは2位の太陽ヨットしかない。太陽ヨットの影が太陽電池パネルに掛かっている・・・。
「しかし、1000km先から、この高々100mのターゲットに影を落とせるものだろうか・・・」
 海上を走るヨットも、後ろのヨットの帆が風を遮ることで、先を進むヨットの速度を落とすことができると聞いたことがある。理論的には可能だろうが、宇宙空間で実現できるものだろうか。
「たまたまなのか・・・?」

 俺は地上スタッフと打合せし、進路をランダムにずらすことにした。これで相手は逆さトンボに影を落とすのが難しくなる。しかし、・・・

 太陽電池パネルの発電量は一向に改善しなかった。パイロットが優秀なのか、あるいは何か超能力のようなものを持っているのか?

 2位に付けていた太陽ヨットは瞬く間に距離を詰めてきた。そして、望遠モニターでその姿を確認し、俺も地上スタッフも息を飲んだ。

「でかい・・・」
 いや、正確には、機体の大きさは標準的だが、その周りに半径10kmほどの円形の巨大な銀色の膜が張られている。円形を保てているのは、回転させているからだろう。太陽光の妨害シート。これだけ大きければ、俺の逆さトンボの進路変更に追随するのも容易だっただろう。

「しかし・・・」
 手の内が見えれば、こちらのものだ。俺は大きく舵を切り、進路を大幅に変更した。そして、ゴールに向かって巨大な螺旋状のコースを設定した。

 2位の太陽ヨットは妨害シートのせいか、大幅な進路変更はできないようで、俺の逆さトンボの妨害には失敗した。そして俺は、僅差で先にゴールすることができ、地上スタッフと歓声を上げた。これで、ボーナスも来年の仕事も確保できたことだろう。

 2位の太陽ヨットはいい線をいっていた。もし、俺が妨害シートに気づかなければ、俺を追い越して1位になっていたことだろう。まあ、銀色ではなく、黒色のシートにしておけば・・・。

おしまい
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