太陽ヨット
-修.
今年の太陽ヨットレースが始まって既に9日が経った。残り1日。
太陽ヨットは、ほとんど太陽光だけで進むことができる。俺の乗る太陽ヨットは、長さ50m、幅10mの長方形の太陽電池パネル4枚を持つ、細長いパイプ状の宇宙船だ。前方に展開した電磁網で、宇宙空間中の極めて希薄な分子を集め、パイプの中でコロナ放電で帯電し、電磁コイルで後端から勢いよく吹き出し、推進する。言わば、レールガンを後ろに向けてぶっぱなしながら進むようなものだ。
太陽電池パネルは可動式で、横から太陽光を受けて進むときは、まるでトンボのように4枚の羽根を広げて飛行する。ただし、進む方向は逆で、おしりが先端で、羽根が生えたところが後端だ。「逆さトンボ」、人からはそう呼ばれている。
太陽ヨットのレースは宇宙船メーカーの威信を掛けたレースである。俺はこの逆さトンボを作ったメーカーに雇われたパイロット。プライベートでは大富豪の参加もあるが、太陽ヨットの構造、そして運用に使われる技術は日進月歩であり、メーカーでなければ上位入賞は望めない。
ヨットの重さと強度。太陽電池パネルの配置の自由度。太陽電池パネルで正確に太陽光を受ける制御、推力の吹き出し方向の制御、発電量と使用電力のバランス。そして何より、パイロットの柔軟な判断と正確な操縦。太陽ヨットは奥が深い。
ラグランジュ点L3からブースターで一定速度まで加速したのち、レースが開始された。そして、徐々に速度を上げつつ、ラグランジュ点L4で大きく旋回して、ラグランジュ点L1がゴールとなる。既にL4の旋回は終了し、太陽を背に受けながら、ゴールのL1を目指すのみだ。
逆さトンボは、機体の性能が良かったのか、太陽電池パネルの制御が秀逸だったのか、現在1位を保っている。残り、約1億Km。
逆さトンボは太陽光を最大限受けるべく、4枚の羽根を十字に展開している。今は逆さトンボではなく、4枚羽根の竹トンボだ。2位の太陽ヨットはライバルメーカーで、俺の後ろ、たった1000kmに迫ってきている。地上スタッフの計測によると、L4の旋回後の速度は向こうが上だが、僅差でこちらが先にゴールできるらしい。何もなければだが・・・。
俺の心配通り、逆さトンボの小さなコックピットに警報が鳴り響いた。
「どうした、故障か・・・。土壇場で!」
俺はインジケータを確認し、警報の内容を確認した。
「発電量低下?!」
隕石の衝突による太陽電池パネルの破損、送電ケーブルのショート、いや単純にセンサー異常もあり得る。しかし、それぞれの状態は正常だ。単純に、発電量が急に下がったということか・・・。
今年の太陽ヨットレースが始まって既に9日が経った。残り1日。
太陽ヨットは、ほとんど太陽光だけで進むことができる。俺の乗る太陽ヨットは、長さ50m、幅10mの長方形の太陽電池パネル4枚を持つ、細長いパイプ状の宇宙船だ。前方に展開した電磁網で、宇宙空間中の極めて希薄な分子を集め、パイプの中でコロナ放電で帯電し、電磁コイルで後端から勢いよく吹き出し、推進する。言わば、レールガンを後ろに向けてぶっぱなしながら進むようなものだ。
太陽電池パネルは可動式で、横から太陽光を受けて進むときは、まるでトンボのように4枚の羽根を広げて飛行する。ただし、進む方向は逆で、おしりが先端で、羽根が生えたところが後端だ。「逆さトンボ」、人からはそう呼ばれている。
太陽ヨットのレースは宇宙船メーカーの威信を掛けたレースである。俺はこの逆さトンボを作ったメーカーに雇われたパイロット。プライベートでは大富豪の参加もあるが、太陽ヨットの構造、そして運用に使われる技術は日進月歩であり、メーカーでなければ上位入賞は望めない。
ヨットの重さと強度。太陽電池パネルの配置の自由度。太陽電池パネルで正確に太陽光を受ける制御、推力の吹き出し方向の制御、発電量と使用電力のバランス。そして何より、パイロットの柔軟な判断と正確な操縦。太陽ヨットは奥が深い。
ラグランジュ点L3からブースターで一定速度まで加速したのち、レースが開始された。そして、徐々に速度を上げつつ、ラグランジュ点L4で大きく旋回して、ラグランジュ点L1がゴールとなる。既にL4の旋回は終了し、太陽を背に受けながら、ゴールのL1を目指すのみだ。
逆さトンボは、機体の性能が良かったのか、太陽電池パネルの制御が秀逸だったのか、現在1位を保っている。残り、約1億Km。
逆さトンボは太陽光を最大限受けるべく、4枚の羽根を十字に展開している。今は逆さトンボではなく、4枚羽根の竹トンボだ。2位の太陽ヨットはライバルメーカーで、俺の後ろ、たった1000kmに迫ってきている。地上スタッフの計測によると、L4の旋回後の速度は向こうが上だが、僅差でこちらが先にゴールできるらしい。何もなければだが・・・。
俺の心配通り、逆さトンボの小さなコックピットに警報が鳴り響いた。
「どうした、故障か・・・。土壇場で!」
俺はインジケータを確認し、警報の内容を確認した。
「発電量低下?!」
隕石の衝突による太陽電池パネルの破損、送電ケーブルのショート、いや単純にセンサー異常もあり得る。しかし、それぞれの状態は正常だ。単純に、発電量が急に下がったということか・・・。
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