現世転生
会社のセキュリティゲートを抜け、エレベーターホールで待っていると、部下の森木さんが俺を見つけて話しかけてきた。彼女は入社3年目で俺のアシストに付いている。
「山田先輩・・・、ですよね、おはようございます。見違えましたよ。どうしたんですか。メイクもばっちりだし、髪もロングになっているし・・・。エクステですか、それともウィッグ? いやー、女の私から見てもいけてますよ。」
「メイク?!」
俺は思わず、聞き返した。メイク、誰が・・・。そして、髪に手をやって、初めて気がついた。髪がロングヘヤーになっている。
「ん?!」
俺は思わず自分の体に目をやった。TシャツはTシャツだが、胸が膨らんでいる。綿パンはなぜかタイトスカートになり、肩にかけていたブリーフケースは、黒のトートバックに代わっている。
俺は女になっているのか? いったいいつの間に・・・
「森木さん、俺ってどうなっている?」
「山田先輩、一言で言えば、いけてるビジネスウーマンになっていますよ。『俺』はちょっと似合いませんけど・・・」
「・・・」
俺は言葉を失った。これは一種の転生というやつだろうか。映画なら、男女の体と心が入れ替わるというところだろうが、俺は俺の心まま、体の性別が変わってしまったということなのだろう。
「山田先輩どうしたんですか。急に固まっちゃって・・・」
「いや、このまま仕事に行ってもいいものか・・」
俺は気が動転して、女の格好のまま仕事に突入することがためらわれた。
「何言っているんですか。そのくらいのイメチェンは大丈夫ですよ。胸を張って、堂々とした方がいいですよ。」
「そのくらいって・・・」
そんなものだろうか、大企業ではジェンダーフリーが徹底されている。さらに最近はLGBT対応も進んでおり、女装した男性の責任者も居ると聞く。しかし、俺が急に女になっていたら、さすがに職場には動揺が広がるのではないだろうか。
「その前にちょっとトイレに行こうかな。確かめたいこともあるし・・・」
俺は自分の体がどうなっているのか確かめたかった。しかし、通路で体のあちらこちら触るのはさすがにためらわれた。
「えっ、じゃ一緒に行きますよ。」
付いてくるのか、女性はよく一緒にトイレに行くのを見かけるが、そういうことだろうか。
「山田先輩、そっちは男子トイレですよ。こっち、こっち・・・」
俺が習慣で男子トイレに入ろうとするのを、森木さんに止められ、女子トイレに引っ張り込まれた。
「え、え、え、いいのかな・・・」
「何を言っているんですか、男子トイレなんかに入ったら、みんなが驚きますって!」
俺は促されるまま、女子トイレに入り、個室の中で胸が実際にあるのと、あるべき下腹部がないことを確認した。調べるまでもなかったが、女になったことは間違いないようだ。
そして、手洗い場の鏡で自分の姿を見ると、男だった俺の特徴は残したまま女性化した、ロングヘヤーの俺がいた。森木さんの言う通り、きっちりメイクもしている。
「なんてことだ・・・」
俺は、森木さんと一緒に事務所に入った。
「お、おはようございます。」
俺は、おそるおそる小声で挨拶をした。しかし、事務所のみんなの反応は思ったほどでなく、いつもよりやや長く見つめられたものの、みんな「おはようございます」と小さく返して、仕事に戻っていった。
こんなものだろうか、男が女に変わったにしては反応が薄い。LGBT対応で、男から女に変わっても、あまりじろじろみないとか、突っ込まないという教育が徹底しているのか。
俺は席に座り、作業を開始した。性別は変わってしまったが、それ以外は滞りなく平穏に進んでいる。そして、何事もなかったように終業時間となった。職場が大混乱になると思ったが、そんなことは全くなかった。
「いつも通り、一日が終わったな・・・」
俺は、小さく「お先に失礼します」と言い、事務所を出た。
「山田先輩・・・、ですよね、おはようございます。見違えましたよ。どうしたんですか。メイクもばっちりだし、髪もロングになっているし・・・。エクステですか、それともウィッグ? いやー、女の私から見てもいけてますよ。」
「メイク?!」
俺は思わず、聞き返した。メイク、誰が・・・。そして、髪に手をやって、初めて気がついた。髪がロングヘヤーになっている。
「ん?!」
俺は思わず自分の体に目をやった。TシャツはTシャツだが、胸が膨らんでいる。綿パンはなぜかタイトスカートになり、肩にかけていたブリーフケースは、黒のトートバックに代わっている。
俺は女になっているのか? いったいいつの間に・・・
「森木さん、俺ってどうなっている?」
「山田先輩、一言で言えば、いけてるビジネスウーマンになっていますよ。『俺』はちょっと似合いませんけど・・・」
「・・・」
俺は言葉を失った。これは一種の転生というやつだろうか。映画なら、男女の体と心が入れ替わるというところだろうが、俺は俺の心まま、体の性別が変わってしまったということなのだろう。
「山田先輩どうしたんですか。急に固まっちゃって・・・」
「いや、このまま仕事に行ってもいいものか・・」
俺は気が動転して、女の格好のまま仕事に突入することがためらわれた。
「何言っているんですか。そのくらいのイメチェンは大丈夫ですよ。胸を張って、堂々とした方がいいですよ。」
「そのくらいって・・・」
そんなものだろうか、大企業ではジェンダーフリーが徹底されている。さらに最近はLGBT対応も進んでおり、女装した男性の責任者も居ると聞く。しかし、俺が急に女になっていたら、さすがに職場には動揺が広がるのではないだろうか。
「その前にちょっとトイレに行こうかな。確かめたいこともあるし・・・」
俺は自分の体がどうなっているのか確かめたかった。しかし、通路で体のあちらこちら触るのはさすがにためらわれた。
「えっ、じゃ一緒に行きますよ。」
付いてくるのか、女性はよく一緒にトイレに行くのを見かけるが、そういうことだろうか。
「山田先輩、そっちは男子トイレですよ。こっち、こっち・・・」
俺が習慣で男子トイレに入ろうとするのを、森木さんに止められ、女子トイレに引っ張り込まれた。
「え、え、え、いいのかな・・・」
「何を言っているんですか、男子トイレなんかに入ったら、みんなが驚きますって!」
俺は促されるまま、女子トイレに入り、個室の中で胸が実際にあるのと、あるべき下腹部がないことを確認した。調べるまでもなかったが、女になったことは間違いないようだ。
そして、手洗い場の鏡で自分の姿を見ると、男だった俺の特徴は残したまま女性化した、ロングヘヤーの俺がいた。森木さんの言う通り、きっちりメイクもしている。
「なんてことだ・・・」
俺は、森木さんと一緒に事務所に入った。
「お、おはようございます。」
俺は、おそるおそる小声で挨拶をした。しかし、事務所のみんなの反応は思ったほどでなく、いつもよりやや長く見つめられたものの、みんな「おはようございます」と小さく返して、仕事に戻っていった。
こんなものだろうか、男が女に変わったにしては反応が薄い。LGBT対応で、男から女に変わっても、あまりじろじろみないとか、突っ込まないという教育が徹底しているのか。
俺は席に座り、作業を開始した。性別は変わってしまったが、それ以外は滞りなく平穏に進んでいる。そして、何事もなかったように終業時間となった。職場が大混乱になると思ったが、そんなことは全くなかった。
「いつも通り、一日が終わったな・・・」
俺は、小さく「お先に失礼します」と言い、事務所を出た。
