独立歩兵

 ヒューン、ヒューンという音がだんだん大きくなっていく。しかし、それ混じって草のざわめきが聞こえるのも不思議だった。

 来た。20m。俺は手榴弾を振り回しながら岩の上に立った。相手が一瞬ひるんだ。この間に俺はワイヤーがうなりだすほど速く振り回すことに成功した。

 そして、次の回で放そうとしたとき相手が行動した。その行動があまりに早過ぎたため俺にはすぐには何が起こったのかわからなかった。

 しかし、コンマ何秒かの後に俺は認識した。相手は後ろに逃げ、しかも刀を投げたのである。俺は思わずワイヤーを持つ手を離し、頭から後ろへ倒れこんだ。頭が地面につくかと思った刹那、敵の刀が俺の足を刻むのが見えたような気がした。俺は死の恐怖に包まれた。

 そしてそのとき、空が輝いた。手榴弾が命中するにしては早すぎる。やはり、はずれた。所詮、1対1では人はロボットには勝てない。俺は岩陰で横たわったままでいた。

 足をやられてロボットを倒すのは不可能である。何もしないでいれば、ロボットがとどめをさしてくれる。ロボットも傷ついた人間をそのままにして苦しめるというような芸当はできないはずである。
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