独立歩兵

 岩山を乾燥した冷たい風が走った。煙が流れいく。相手が見えた。俺は思わず目を疑った。敵はやはり右にいた。しかも弾が当たっていた。

 敵のレーザー砲が2門とも下に転がっている。どうやら機関銃と相打ちになったらしい。敵がレーザー砲を見捨てたということは、レーザー砲の動力部に当たったのか、それともレーザーのプロセッサーが故障したのか、どちらにしてもかなりこちらが有利になったことは確かだった。

 しかし、この確信も一瞬のことだった。またも目を疑わざるを得ないことが発見された。敵は刀を持っているのである。

 これは特筆に値することである。ロボットに刀を持たせるということはかなり昔から考えられていたことだが、刀を持つことによって腕の動きがセーブされることと、技を覚えるためメモリーを割くことが懸念され、実戦には登場していないはずであった。それが目の前にいるということは、もっとほかにも・・・。

 しかし、考えてどうなることでもなく、逃げることも不可能だった。移動速度はあちらの方が早いのだから・・・。生き延びる方法は相手を接近戦で倒すことのみである。
 上部は装甲で覆われているが、下の足の部分はその複雑な機構のためにかなり弱いと言われていた。こちらも急いで対策を考えなければならなかった。俺は手榴弾を投げたい欲求に駆られた。

 しかし、それは自殺行為である。もし手榴弾を投げれば相手はよけながら突っ込んでくるに違いない。そして刀でばっさりと・・・。

 しかし俺は思い出した。ワイヤー術。対ロボット戦、しかも、相手が長距離兵器を持たないときには、ワイヤーは恐るべき武器となり得る。ぐずぐずしてはいられなかった。俺はワイヤーを取り出し、一端に振動爆破型手榴弾を結んで待機した。相手が遠すぎるのである。
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