独立歩兵

 ゴロゴロした岩の上を10分ほど歩いただろうか。俺はある音に気がつき、無意識のうちに身構えていた。ヒューン、ヒューンという音。間違いない。

 あれはロボットのサーボモーターの音である。だんだん大きくなっていくようだ。近づくにつれ音が明確に聞こえ出した。この音はどうも二脚支持タイプのようである。俺は一抹の恐怖を覚えた。軍の教練所で聞かされた敵のロボットの音とそっくりなのである。俺は思わず身近な岩の陰に隠れ敵の接近を待った。

 そいつは来た。そして止まった。わずか50mぐらいのところで・・・。

 そいつは2mぐらいの、一見、イカを思われるような恰好をしていた。それは、手や足のあまりにも複雑な機構があちこちでむき出しになっているからである。

 頭に当たる部分には、さまざまな知覚装置が所狭しと並んでいる。そして、その両側面にはレーザー砲が、軽快な動きを与えそうな装置ととともに張り出している。手と足は俺の背丈ほどもありそうで、その関節部分は多数の弾痕のついた金属でカバーされている。相手はかなりの戦闘をくぐりぬけてきたようである。

 ということは、この辺に味方がいるかもしれないという希望がわいてくる。しかし?降りてこんなにすぐに敵が来るとなると敵はうじゃうじゃいるにちがいない。とすれば、味方が生き残っていてしかも助けにくる余裕があるとは思えない。

 味方が複数なら、少なくとも3人以上なら、相手を銃で撃つこともできる。しかし、一人ではそれは自殺行為である。相手は数多くの戦闘パターンを覚えているので一発撃てばこちらのパターンが見つけられ、それで終わりである。

 ところがしかし、常軌を逸してそいつは突然襲ってきた。と言っても、石を投げただけではあるが・・・。相手はなかなかレーザーを使わない。レーザーは一瞬に多量のエネルギーを消費し、発射中はコンピューターが一瞬、10分の1秒以上止まるからである。
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