遥かなる呼び声

                          -修.

「船長、ようやく到着ですね。」
「そうだな・・・」
 恒星探査船スペースプロージャー号の船長は、数年間の準備期間と1年間の宙航期間を思い起こしながら、感慨深げにうなずいた。

 今を遡る5年前、衛星軌道に建造された宇宙天文台がわずかな信号を捉えた。10光年かなたのレギウス星系の第三惑星から、約4時間周期で繰り返し送られてくる光波のデジタル信号。情報量は数百ビットあったが、内容の解析には誰も成功していなかった。

 数千、数万光年のかなたからの信号であれば、地球に到達するまでに数千、数万年経過しており、異星人やその文明が存続している可能性は極めて低い。しかし、10光年の距離のレギウス星系であれば、信号はたった10年前に発せられたものであり、生きている異星人やその文明に触れられる可能性が高い。もし異星人に会えれば、人類にとってのファーストコンタクトとなる。

 このため、地球政府は技術を結集し、光速の10倍の速度が出せる恒星間宇宙船を建造し、この惑星を有人探査することにした。そして、恒星間宇宙船は1年間の宙航を経て、調査が開始できる距離に到達していた。

「船長、長距離センサーの解析結果が出ました。第三惑星には大気がありませんね。」
「なんだって。我々の想像とは違っていたな。異星人が生きているとすれば地下都市だろうか。それとも大気がなくなって、異星人は第三惑星から逃げ出してしまったという可能性もあるな。いずれにしろ、信号は今でも発信され続けているので、何らかの発信設備はあるのだろう。」
「そうですね。もう数時間で光学望遠鏡の撮像可能距離に達しますので、映像を見て判断するしかないですね。」

 それから数時間が過ぎ、地上の映像がうっすらと見えるようになってきた。
「船長、地表に網目というか、波目というか、何かの模様が見えます。」
「よくわからないが、人工的なもののようだな。他には建造物やドームのようなものはないか。」
「コンピューターに画像解析させていますが、この模様以外は何もないようですね。」

 宇宙船が第三惑星に近づくにつれて、映像がはっきりしてきた。
「船長、あれは何かのパネルですね。おびただしい数のパネルが惑星表面を覆っています。」
「この風景、地球でも見たことがあるような・・・」
「あー、太陽光発電所と似ていますね。」
「いや、似ているどころか、もしや太陽光発電所そのものじゃないのか?」
「ということは第三惑星全体が発電所ということですかね?」
「そうだな。異星人の作った発電所だ。」

「でも、第三惑星全体が発電所だとすると、ここに異星人が居ますかね。地球でも太陽光発電所は無人ですよね。」
「確かにそうだ。しかし、無人だとすると、誰が何のために信号を送ってきたのだろうか?」
「そうですね。地球に信号を送る必要はないような・・・」

 恒星間宇宙船はさらに第三惑星に接近し、赤道上空を回る軌道に入りつつあった。そして、この星系の恒星であるレギウス星と第三惑星とがある角度になったとき、地表のパネルの反射光が恒星宇宙船に当たり始めた。

 地表にびっしりと設置されたパネルから次々と発せられる反射光は、地球に到達したデジタル信号そのものだった。

おしまい
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