N博士の観覧車

                          -修.

「今度は観覧車ですか・・・・」

 千年に一度の天才と言われるN博士の実験。その発明には毎回驚かされるが、場合によっては命の危険を伴うこともある。

 N博士に資金を提供している投資家たちは、N博士に専属のエージェントを付けていた。そして、エージェントは再びN博士に呼び出されたのだった。

 エージェントは、山々に囲まれた軍隊の演習場に設けられた、トーチカの細長い窓から外を見つめていた。その先には、赤、青、黄色の3つのゴンドラの付いた、高さ5mほどの小さな観覧車があった。

「近くの遊園地が閉園することになったので、記念に安く譲り受けていたのだ。」
「その観覧車が今日の実験の装置なのですか。」
「そうだ。丁度手ごろなサイズなのと、ゴンドラの数が奇数なので、実験に利用することにした。今回も『ほぼ永久機関』の実験だ。」

 「ほぼ永久機関」とはN博士の命名で、地球が滅びるときにはどんな機械も壊れるから「永久機関」に「ほぼ」が付いている。エージェントは、前回、N博士が行った気圧差をつかったほぼ永久機関の実験に立ち会った。それは想定以上の成果があった反面、災害級の危険を生じることになった。

「今回は大丈夫なのでしょうね。またトーチカの中というのが不安ですが・・・」
「まあ、たぶん大丈夫と思うが、念のためトーチカに入ることにしたのだ。」
「はぁ・・・」
 エージェントは再び嫌な予感しかしていなかった。しかし、投資家への説明のためには詳細を聞いておく必要があった。

「今回はどのような実験なのですか?」
「ふむ。前回は高度の違いによる気圧差を利用してファンを回して発電する方式だったが、出力が強すぎてうまくいかなかった。計算によると、ファンは直径10cm程度、発電機は直径1m程度の巨大なものが必要だったようだ。このサイズで作れば理論的にはうまくいくのだが、美的バランスが悪すぎて作る気にならない。」

 エージェントは、人類の夢、いや投資家が泣いて喜ぶ、無尽蔵のエネルギーをあきらめることが残念でならなかった。しかし、一方で、N博士の気まぐれには慣れっこになっていた。なにせ、千年に一度の天才なのだから・・・。

「そこでだ、今回は観覧車を利用した『ほぼ永久機関』を作ってみた。観覧車の左側の地面に白いプレートが見えるだろう。あのプレートの上空5mほどを無重力空間にしてある。観覧車は、右側のゴンドラの重量で回転力を得て、発電するわけだ。」

「なるほど。しかし、無重力空間を作るのにもエネルギーが要りますよね。そちらが大きいとエネルギーが足らなくなるのでは・・・」
「君は前の実験を忘れたのか。わしの発明した重力制御は、自動車位の大きさでも乾電池で浮遊させられるのだ。無重力にするエネルギーは微々たるものだ。」

 エージェントは、また嫌な記憶を思い出した。過去のVTOLの実験で、乾電池の差し替えに失敗して、墜落しかけたのだった。
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