家政婦 No. META 調理オプション

                          -修.

「ミータ、ちょっと時間もらえるかな。」
「はい、ご主人様。30分程であれば余裕がございます。なんでしょうか。」

 「ミータ」は、正確には汎用人型サポートロボットNo.METAという。外観はどうみてもロボットで、頭の部分はディスプレイになっており、ヘノヘノモヘジのような線画で表情が示される。身長160cmほどで、一部に防犯用の装甲が追加されているが、全体的には華奢なボディだ。

 我が家は俗にいうパワーカップルで家事に手が回らないため、1年程前にこのロボットの家政婦を導入した。導入当初は、掃除、洗濯、温め直しなどの簡単な調理ができる基礎家事パックを導入していたが、パワーカップルは泥棒に狙われる危険性があると言われ、途中で防犯オプションも追加していた。

 家事の中でも食事だけは自分たちで作ろうと頑張っていたのだが、最近、妻が管理職になり、二人とも忙しいせいか、コンビニ弁当やケータリングが増えつつある。これでは体調面が心配なので、妻と話して「ミータ」の調理オプションを検討することにしたのだ。

 俺は妻もリビングに呼び、ソファーに座って、ミータから調理オプションの内容を聞くことにした。
「ミータも理解していると思うが、妻が忙しくなったので、調理オプションを導入したらいいんじゃないかと思っている。ただ、内容が複雑そうなので、どんなものか教えてもらえないだろうか。」
「ご主人様、奥様、承知しました。では調理オプションについて説明させていただきます。」

 ミータは本部からデータを取り寄せたのか、一瞬沈黙したが、すぐに説明を始めた。
「まず、調理オプションには4つのプランがございます。費用が安い順に、ベーシック、スタンダード、プレミアム、シュープリームです。」

 ミータは一呼吸おいて説明を続けた。
「ベーシックでは一般家庭を想定した料理をお出しします。煮物、揚げ物、焼き物など、いわゆるおふくろの味ですね。このプランは経済面にも重点を置いており、カレーなどは市販のルーを使い、作り置きして2、3回出したり、夜の鍋の残りを次の日の朝のスープにしたりもします。介護オプションとペアで利用されることもあります。」
「ふーん、一言で言えば普通ってことね・・・」
 妻も興味津々で聞いている。

「はい、奥様のおっしゃる通りでございます。定番の家庭料理をお出しするプランで、おいしさには自信がありますが、食に憧憬の深いお二人には若干面白みに欠けるかと思います。そこで、私からお勧めするのが、次のスタンダードプランです。こちらは、意識高い系の奥様の料理を想定しております。」
「意識高い系・・・」
 俺は小さく繰り返した。

「はい、同じカレーでも、腸活とデトックスを狙って、ボーンブロスと有機レンズ豆の薬膳カレースープだったり、同じハンバーグでも、動物性たんぱく質を避けた、大豆ミートのハンバーグだったりと、少し趣の異なる料理が数多く出てまいります。このため、お二人も飽きることなくお食事を楽しめるかと思います。」
「フーン、おいしそうね。なんか、外で食べているみたいな・・・」
 妻は時間の掛かる料理を作ることはないが、外では色々なものを食べているため気になるようだ。

「はい、奥様。いわゆる『たまに行くならこんな店』で出てくるような料理ですね。なお、さらにオプションとして、町の料理店のシェフオプションが用意されております。例えば、町中華シェフオプションを導入されますと、町の中華料理屋で出るような料理がすべて出てまいります。」
「それはいいね。俺、中華料理好きだから・・・」
「はい、ただ、ベーシックとの違いとして、食材などの必要経費が2倍程度掛かる点はご理解ください。」
「まあ、おいしいものが食べられればいいんじゃない。で、残りの2つのプランはどうなの。」
 妻にとっては、少々高くても、日頃のストレスを癒してくれるような料理が重要なのだろう。
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