根掛かり
-修.
「異世界人さん・・・、だよね。釣れているかね?」
釣り具メーカーのロゴの入ったキャップを被り、ポケットのたくさん付いたベストを着た、日に焼けた釣り人は、岩場で釣りをしているカマキリのような姿の異世界人に恐る恐る話しかけた。
「なかなか釣れないですね。最近、おいしい魚の味を覚えまして、自分でも海で釣ってみたいと思ったのですが、難しいようです。」
異世界人は、1年ほど前に都会の雑踏に突然現れた。その姿は、人ほどの大きさの全身緑色で、まるでカマキリだった。異世界人は、実体は高次元空間に存在しており、人間が見ているのは3次元に投影された影のようなものだそうだ。
出現直後は大騒ぎになったものの、異世界人は流ちょうに日本語を話し、侵略の意思がないことや、日本の文化を楽しみたいといった意図を伝えてきた。その様子はネットやテレビで流れたため、釣り人も相手が異世界人であることを知っていた。そして、釣り人は、相手が異世界人とはいえ、釣り仲間には違いないと話しかけてみたのだった。
「この辺りでは、今なら、クロとか、チヌとか取れるんだけどね。ちょっと仕掛けを見てやろうか。」
「ありがとうございます。初めて釣りをするので、勝手が分からなくて・・・」
異世界人は竿を上げ、仕掛けを釣り人に差し出した。
「うーん、ちょっと中途半端だな。チヌ用に手直ししてやるよ。」
釣り人は自分の道具を使って仕掛けを直してくれた。
「これで大丈夫だ。じっくり構えとけばチヌが釣れると思うよ。でも、チヌは深いところを狙うから根掛かりには注意しないといけないよ。」
「根掛かりですか?」
「海底には岩があるから地球が釣れてしまうということさ。」
「美味しいですか。」
「あー、クロダイだからね、そのまま刺身でも、お吸い物でもいけるよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
釣り人は手を振りながら去っていった。
異世界人は釣り糸を動かしながら再び釣りを始めた。そして、案の定、針が岩に引っかかった。しかし、異世界人は慌てず、地球を釣り上げ始めた。高次元空間に存在している異世界人にとっては、数十センチのチヌも、1万キロメートルを超える地球も大差なかったのだ。そして、異世界人は釣りあげた地球を口に運んだ。
「中は熱々だが、味は全然ないな・・・」
異世界人は噛み砕いた地球を「ペッ」と吐き出した。
かくして、地球人は何が起こったのか知ることもなく、地球は滅亡した。
おしまい
「異世界人さん・・・、だよね。釣れているかね?」
釣り具メーカーのロゴの入ったキャップを被り、ポケットのたくさん付いたベストを着た、日に焼けた釣り人は、岩場で釣りをしているカマキリのような姿の異世界人に恐る恐る話しかけた。
「なかなか釣れないですね。最近、おいしい魚の味を覚えまして、自分でも海で釣ってみたいと思ったのですが、難しいようです。」
異世界人は、1年ほど前に都会の雑踏に突然現れた。その姿は、人ほどの大きさの全身緑色で、まるでカマキリだった。異世界人は、実体は高次元空間に存在しており、人間が見ているのは3次元に投影された影のようなものだそうだ。
出現直後は大騒ぎになったものの、異世界人は流ちょうに日本語を話し、侵略の意思がないことや、日本の文化を楽しみたいといった意図を伝えてきた。その様子はネットやテレビで流れたため、釣り人も相手が異世界人であることを知っていた。そして、釣り人は、相手が異世界人とはいえ、釣り仲間には違いないと話しかけてみたのだった。
「この辺りでは、今なら、クロとか、チヌとか取れるんだけどね。ちょっと仕掛けを見てやろうか。」
「ありがとうございます。初めて釣りをするので、勝手が分からなくて・・・」
異世界人は竿を上げ、仕掛けを釣り人に差し出した。
「うーん、ちょっと中途半端だな。チヌ用に手直ししてやるよ。」
釣り人は自分の道具を使って仕掛けを直してくれた。
「これで大丈夫だ。じっくり構えとけばチヌが釣れると思うよ。でも、チヌは深いところを狙うから根掛かりには注意しないといけないよ。」
「根掛かりですか?」
「海底には岩があるから地球が釣れてしまうということさ。」
「美味しいですか。」
「あー、クロダイだからね、そのまま刺身でも、お吸い物でもいけるよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
釣り人は手を振りながら去っていった。
異世界人は釣り糸を動かしながら再び釣りを始めた。そして、案の定、針が岩に引っかかった。しかし、異世界人は慌てず、地球を釣り上げ始めた。高次元空間に存在している異世界人にとっては、数十センチのチヌも、1万キロメートルを超える地球も大差なかったのだ。そして、異世界人は釣りあげた地球を口に運んだ。
「中は熱々だが、味は全然ないな・・・」
異世界人は噛み砕いた地球を「ペッ」と吐き出した。
かくして、地球人は何が起こったのか知ることもなく、地球は滅亡した。
おしまい
1/1ページ
