N博士のほぼ永久機関

「まあ、実験は簡単なものなので早速スタートしよう。ほれ・・」
 N博士は何のためらいもなく、大きな赤いボタンの付いたスイッチを押した。スイッチの回りにはいくつかのメーターとモニターがあり、換気扇のような装置と、山の上にある四角い枠のような装置が映し出されていた。

「毎分100回転、200、500・・・、順調に回転数が上がっているな。」
 N博士はメーターを見ながら、成果に満足しているようだった。モニターには、こちら側のプロペラが順調に回っている様子が映し出されていた。

「1000、2000・・・、なかなか順調だな。」
 エージェントは、トーチカの窓から装置の方を見て、あまりの光景に息を飲んだ。
 それは装置を中心とした巨大な砂嵐、いや竜巻だった。通常の竜巻は地上から空中に伸びていくが、この竜巻はドーム状で、装置の回りの地面から砂埃を巻き上げて、中心の装置へ吸い込んでいた。そして竜巻の中で発生した雷のため、砂埃を通して稲光が見えた。
「N博士、なんか、すごいことになっていますよ・・・」

 しかし、N博士はエージェントの言葉には反応することなく、メーターを見続けていた。
「おかしい、回転数が落ちていく。これはプロペラが破壊したのかもしれん。強度が足らなかったようだな。仕方ない、装置を停止しよう。」
 N博士がスイッチを切ると、徐々にモニターから砂埃が消え、プロペラがなくなった装置がうっすらと見えてきた。

 エージェントは再び肉眼で装置の方を見て愕然とした。
「N博士、見てください。装置の回りの土がえぐれて無くなっていますよ。」
 装置の回りにできた深さ20mほどの巨大な溝は、トーチカのすぐそばまで迫っていた。N博士も顔上げ、外の様子を見て状況が把握できたようだった。
「やはり影響が大きかったな。このトーチカに入っていて命拾いしたようだ。ある面、想定通りとも言えるがな。」

「いやー、N博士、命拾いできたんでしょうかねぇ・・・」
 エージェントはもう1つの装置が置かれた山を見つめながらつぶやいた。そこには、さっきまで雲一つなかったところに、装置から噴き出した上昇気流によってか、天高くそびえる、雷を伴った積乱雲ができていた。そして、山腹には装置から噴き出した土砂が降り注ぎ、雨水と混ざって土石流となってこの演習場へと向かって来ていた。

おしまい
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