ビクトリーラーメンマンシリーズ第12弾 フルーティーな・・・

                           ―修.

 それは3日前のことだ。いつもの長期出張から戻り、事務室の扉を開けると課長席にはアイドルが座っていた。いや、本当のところは分からないが、フリフリのついたバススリーブのピンクのドレス、縦ロールのロングヘヤーにピンクのリボン、歳は20前半だろうか。何よりちょっとかわいい・・・。どう見てもアイドルだ。

 俺は部屋を間違えたと思い、一旦廊下に戻り、扉の文字を読み直した。
「食材調査課、間違っていない・・・・」
 今度の課長はアイドルなのか・・・・。いや、もしかすると「一日警察署長」みたいな奴か。しかし、この地味な、ほとんど人のいない事務室でやっても何の意味もないだろう。
 いやいや、新しい課長の娘さんということもあり得る。動画配信用に「ちょっと、お父さんの席に座ってみた!」とか・・・、あり得ないか・・・。

 前の課長は両腕丸出しのストリンガーを着たボディビルダーだったし、コスプレが趣味で、顔が完全に隠れた甲冑を着ていた女課長も居た。もう、何でもありなのかもしれない・・・。

「甲斐さんですかぁ~。初めましてぇ、こちらに着任しました鈴木美緒といいますぅ。よろしくお願いしますね。」
 俺が再び扉を開けた途端、向こうが立ち上がって挨拶をしてきた。若いというか、アイドル口調というか。最後にハートマークが付いているように聞こえる。俺自身の思い込みだろうが・・・。
「甲斐です。よろしくお願いします。」
 俺は何とか言葉を返し、その日は課長とは会話することなく過ごした。

 翌日、人事の同期に聞いたところ、彼女は25歳。飛び級で博士号まで取った秀才だそうだ。そうでもなければ、あの若さで課長にはなれないだろう。

 しかし、驚くべきは、副業で「フルーティー」というアイドルグループもやっているということだ。会社は服装が自由化されているためか、ステージ衣装で出勤し、定時後はアイドル活動に直行するということだ。ある面、筋金入りと言っていいだろう。

 人事情報は秘密だと言って性別さえも教えてくれないことがあるのに、相手によっては何でも教えてくれる。頼りにはなるが、人事のあいつは大丈夫なのだろうか。
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