戦いは市立武蔵が丘図書館

 折葉は、オルファ・バージョン1が自動的に動作を開始したのを見極め、端末から顔を上げた。図書館内は相変わらず、先程と同じ人々が各々の端末で、読書や作業を続けていた。図書館内は時折、誰かの咳払いが聞こえる程度で極めて静かであった。

 折葉は、端末から発せられたピンという小さな警告音で現実に引き戻された。端末には使用したプログラムの数百に及ぶリストと、その1つ1つのすべての状況表示領域に「使用中につき、アクセス不可能。」という表示が点滅していた。

 「なにぃ。」
 折葉は、小さくつぶやいた。いままでこういった作業を図書館で何度かやってきたが、自分が引用した文献がすべて使用中という場面には遭遇したことがなかった。

 あってもせいぜい1つか、2つの文献を誰かが使用しているということがあるぐらいで、数百の引用文献のすべてが使用中とは、書庫の整理でもやっているのか、あるいはメインコンピュータがダウンしたのか、いずれにしろ到底信じ難いことであった。
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