戦いは市立武蔵が丘図書館
「よう折葉、今日は図書館か?」
背中からの突然の声に折葉は振り返った。そこには大学の友人の川上が自転車に乗って、すぐそばに迫っていた。川上はいつものこざっぱりした格好で、陽気に手を振っていた。
「ああ、文化人類学のレポートの仕上げ。だいたいできてるんだけどさ。最後の詰めがね。もうちょっとなんだけどね。川上は?」
「俺?俺はとっくの昔に出しちゃったよ。それで暇だから今から街にでも出ようかってところさ。おまえも終わったらどっかで合流しないか。」
川上はこれといったバイトもしておらず、またかなり賢い方だったので、レポート提出期限ぎりぎりといっても慌てた様子を見せたことがなかった。いつもの通りだ。折葉は自分とは根本的にタイプが違うと感じていた。
しかし、そういう折葉も、今回のレポートは比較的自分の好きなテーマを選んでおり、今までのレポート直前のどたばたと比べるとかなりの余裕を持っていた。折葉は今回のレポートでは「優」が狙えると自負していた。
「ああ、そうしたいところだが、いつ終わるか判んないからな。だぶん1時間くらいだとは思ってるけどさ。今回は遠慮しとくよ。」
「わかった。おまえ、いつも忙しいからな。邪魔しちゃ悪いな。それじゃ。」
川上は力強く自転車を漕いで緩い坂道を走り去っていった。
「うらやましいな。」
折葉は小さくつぶやいた。しかし、言葉とは裏腹に、折葉は図書館でのレポートの完成が楽しみでもあったのだ。
背中からの突然の声に折葉は振り返った。そこには大学の友人の川上が自転車に乗って、すぐそばに迫っていた。川上はいつものこざっぱりした格好で、陽気に手を振っていた。
「ああ、文化人類学のレポートの仕上げ。だいたいできてるんだけどさ。最後の詰めがね。もうちょっとなんだけどね。川上は?」
「俺?俺はとっくの昔に出しちゃったよ。それで暇だから今から街にでも出ようかってところさ。おまえも終わったらどっかで合流しないか。」
川上はこれといったバイトもしておらず、またかなり賢い方だったので、レポート提出期限ぎりぎりといっても慌てた様子を見せたことがなかった。いつもの通りだ。折葉は自分とは根本的にタイプが違うと感じていた。
しかし、そういう折葉も、今回のレポートは比較的自分の好きなテーマを選んでおり、今までのレポート直前のどたばたと比べるとかなりの余裕を持っていた。折葉は今回のレポートでは「優」が狙えると自負していた。
「ああ、そうしたいところだが、いつ終わるか判んないからな。だぶん1時間くらいだとは思ってるけどさ。今回は遠慮しとくよ。」
「わかった。おまえ、いつも忙しいからな。邪魔しちゃ悪いな。それじゃ。」
川上は力強く自転車を漕いで緩い坂道を走り去っていった。
「うらやましいな。」
折葉は小さくつぶやいた。しかし、言葉とは裏腹に、折葉は図書館でのレポートの完成が楽しみでもあったのだ。