戦いは市立武蔵が丘図書館

 しかし、敵がメールを打ったのは敵の大失敗だった。こちらは相手のアドレスを知ることができたのだ、居場所を知られてはいかに無敵のガードを固めていたとしても打破されるのは時間の問題であった。

 もちろん、そのアドレスがダミーの可能性はある。しかし、もし敵がメールの経路をモニターしていたとしたら、こちらの所在も知られた可能性が高い。

 「緊急。自己診断プログラム動作中。16ブロッククリアされました。アンチウイルスプログラム起動できません。メモリーワークエリヤガード強制解除されました。」
 「ええぇぇ。」

 やばい時間がない。オルファ・バージョン1がすべて消去されるのも時間の問題のようである。このままやられてなるものか。
 「大学との接続切断。関係アドレス全消去。」
 「動作完了。」

 折葉は端末の表示を見て、ほっとした。これでオルファ・バージョン1の動作は保証できなくなるが、オリジナルまで消去されるという最悪のシナリオは避けられた。

 「よし最後の手段だ。メインコンピュータの自律制御解除開始。」

 折葉は、最後のボタンを押すときに一瞬ためらった。これは究極の攻撃である。まわりの関係ない人達まで多少の迷惑をかけることになる。しかし、蛇の道は蛇。折葉は、最後のボタンを押した。
18/23ページ
スキ