戦いは市立武蔵が丘図書館

 「全館の端末へ連絡レベルのメールを発信。内容、こちらは市立武蔵が丘図書館です。

 ただいまからメインコンピュータの一部自己診断を実施しますので、プログラムを使用されているかたは、お名前とプログラム名を連絡下さい。内容終了。そしてメインコンピュータ宛メールをすべて盗聴。」

 連絡レベルはほとんど館内放送代わりに使用される超低レベルのメールであり、毒にも薬にもならないたわいのないものである。敵はわざわざそんなとこまでガードしていないだろうし、本物だと思い込むだろう。そして、素性を明かす可能性が高い。折葉は端末に顔を伏せたままほくそえんだ。

 「メインコンピュータ宛メール1通を受信。表示します。」
 端末には、敵からに違いないメールが表示された。
 「ザンネンデシタ。アッカンベー。」
 「やられた。」

 まさか、見破られるとは…。敵はメールの経路でもモニターしているのか。
 「緊急。自己診断プログラム自動起動。5ブロッククリアされました。」
 「え。」

 折葉は、真っ赤に染まった端末を見て言葉を失った。メールにウイルスを仕込まれたらしい。うかつだった。敵がそこまで周到に準備していたとは。
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