オルファ・バージョン１は復唱し、「戦闘中」と表示した。これで５分も経てば、ほとんどのガードは破れるはずである。破れないのは、銀行関係と政府関係ぐらいのもののはずである。通常の企業レベルであれば、ほとんど赤子の手をひねるようなものである。

　しかし、それがあまりに楽観的な観測であったことは、１０秒後にわかった。
　「敵より、パスワードアタック被弾中。」
　端末は真っ赤な表示に変わり、攻撃を受けていることを表わしていた。まさか、こちらが行った攻撃と同じ攻撃を受けるとは。

　これではこちらの攻撃を中断せざるを得ない。折葉は青ざめた。相手はやる。ちょっかいを最初に出したのはこちらである。悪くすると、今動作しているオルファ・バージョン１だけでなく、大学のコンピュータに保管しているオリジナルまで根こそぎやられるかも知れない。

　「パスワードランダム変更開始によりパスワードアタック回避。同時にランダムレベルのメールを連続発信。内容は電話帳。」