戦いは市立武蔵が丘図書館

部夢だっちゃ第4号(1999年1月9日発行)掲載

   戦いは市立武蔵が丘図書館
                           ―修.

 市立武蔵が丘図書館へ続く住宅街のゆるい坂道は、すっかり秋の気配だった。銀杏並木は葉がすっかり枯れ落ち、幹のまわりに黄緑色の小山を作っている。残った葉も秋風にあおられ、ゆらゆらと今にも落ちそうに揺れている。空にはうっすらとうろこ雲がかかり、冬の気配が感じられる。

 折葉おりは淳一はその坂道の歩道を黒のメッセンジャーバックを担いで、木の葉を蹴散らしながらさっそうと歩いていた。折葉淳一は武蔵が丘大学3年生。どちらかといえば、目立たない存在である。服装も地味なら、行動も地味。武蔵が丘大学が公立であることを差し引いても、これといった特徴のない学生だった。

 今日は休日のため大学の図書館が休みで、仕方なく市立武蔵が丘図書館でレポートを作ることにしたのだ。それというのも、普段は折葉はファーストフードでアルバイトをしており、大学の図書館が開いている時にはなかなか利用できなかったからだ。

 そして、上期のレポート提出期限はもう真近に迫っていた。しかし今日の折葉は、秋晴れの天気と同様陽気だった。というのも、あと1時間も頑張ればレポートが完成する予定だったからだ。レポートを始めた頃の暗中模索の状態とはまるで気分が違っていた。
1/23ページ
スキ