グリーンボール

 そのとき、思いがけない事態が起こった。
「船長、大変です。アームに葉っぱが絡みはじめました。動かせません。」
「なんだと・・・」
「いや、船長、アームが溶けているようです・・・」
「えっ・・」
 カメラには、草の絡まったアームが途中から分断し始める映像が映っていた。
「耐酸性、耐アルカリ性の合金だぞ・・・、一体どういうことだ・・?」

「着陸脚はどうなっている。溶けてないか?」
 カメラが切り替わるのと同時に部下が声を高めた。
「船長、着陸脚が地面に埋まっています。」
 着陸脚の先端の平坦な部分はすでに地面の中に入り込んで、見えなくなっていた。
「これは元には戻せないようだな・・・」
「船長、脚を切り離して、上昇させましょうか?」
「いや、待て。このままでいい・・・」

 シュミット船長にはある仮説が浮かんでいた。そして独り言のようにつぶやき始めた。
「単一植物による地表全体への繁殖、他の生物が全く存在しない、合金さえも溶かす能力、高低差のない地表、私の予想が正しければ・・・」
 部下はカメラの映像と船長の顔を交互に見ながら聞いていた。

「最も効率よく光合成を行う形状は何か。それは真球だ。この惑星は植物によって岩石を溶かされ、海を埋め尽くされて高低差のない真球になったのだ。言わば、植蝕だな。
 そして、他の植物や動物はすべて淘汰され、この草がこの星の唯一の生物ということなのだろう。」
「極めて珍しいですね。植物のサンプルを持って帰った方が良いのではないですか?
 あ、だめだ・・・」
 部下は言いかけて、事の重大さを理解したようだった。

「君の考えるとおりだ。相手は岩石さえも溶かす植物だ。もし、地表探査機がサンプルを持ち帰ったとすると、このパスファインダー号自身が危ない。さらに、運よく、いや、運悪くと言うべきか、パスファインダー号が地球に帰還して、この植物が地球で繁殖し始めたら、人類は滅亡するだろう。」
「船長、やばいですね。」
「そうだ、最大限危ない惑星だ。地表探査機は惑星にくれてやって、我々は早々に立ち去ろう。」

 後日、惑星Q345-73は危険度Aの惑星に指定され、着陸はもちろん、近づくことも禁止された。

おしまい
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