ウイング・シンドローム
「お待たせ・・。ごめんね。支度に手間取っちゃって・・・」
美咲ちゃんは何事もなかったように話し出した。
「ん・・・?」
俺は現実が認識できないでいた。鳥が美咲ちゃんになった? いや、冷静に考えると、俺は空を飛ぶ鳥を見ながら一瞬眠ってしまったのかもしれない。そして、美咲ちゃんが現れたので、鳥が美咲ちゃんになった夢を見たということだろう。そう考えると、合点がいく。
「いや、先週はごめんね。仕事の疲れでまだ眠くて、ご飯の途中で寝ちゃうかもしれない。たった今も、美咲ちゃんが飛んでくる夢をみていたくらいだ。」
俺が話すと、美咲ちゃんは意外そうな顔をした。
「それは夢じゃないよ。私、飛んできたわよ。」
「えっ?」
俺は目をこすりながら美咲ちゃんを見つめ直した。すると、背中には折り畳んだ白い羽根らしきものが付いているように見える。
「どういうこと?」
「あー、一週間仕事で缶詰めになっていたからネットニュースとか見てないのね。先週から、羽根が生えて飛べるようになった人がたくさん出てきたのよ。私もそうなんだけどね、ほら。」
美咲ちゃんは羽根を広げて見せてくれた。それは、幅4mくらいはありそうな巨大なものだった。
「・・・・」
俺は美咲ちゃんの羽根を見て言葉を失った。美咲ちゃんは、そんな俺の驚きに構わず、話を続けた。
「この1週間、テレビもネットもこの話題で持ちきりなの。どっかの大学の教授は、羽根が生えるなんてありえないし、生物学的に人は飛べないので、これは一種の集団催眠みたいなものだって言っていたわ。本人は羽根が生えたと思い込み、周りはその人が飛んでいると思い込むってことね。それで、この現象をウイング・シンドロームって言うらしいの。」
「ウイング・シンドローム、症候群か・・・」
俺はつぶやいた。
「一回飛んでみれば、すぐに間違いって分かるんだけどね。羽根が生えない人は飛べないからね。」
「はぁ、そういうものなんだ・・・」
俺は理解できないまま、あいまいな返事を返した。
「それはそうと、どこに食べに行く? 疲れているからスタミナの付くものがいいかな。君も羽根が生えてれば一緒に飛んで行けるのにね。ま、歩いていける範囲で考えないとね・・・」
美咲ちゃんは公園の出口に向かって歩き出した。俺は美咲ちゃんについて行きながら、なんとなく背中がむずがゆくなってきていた。
おしまい
美咲ちゃんは何事もなかったように話し出した。
「ん・・・?」
俺は現実が認識できないでいた。鳥が美咲ちゃんになった? いや、冷静に考えると、俺は空を飛ぶ鳥を見ながら一瞬眠ってしまったのかもしれない。そして、美咲ちゃんが現れたので、鳥が美咲ちゃんになった夢を見たということだろう。そう考えると、合点がいく。
「いや、先週はごめんね。仕事の疲れでまだ眠くて、ご飯の途中で寝ちゃうかもしれない。たった今も、美咲ちゃんが飛んでくる夢をみていたくらいだ。」
俺が話すと、美咲ちゃんは意外そうな顔をした。
「それは夢じゃないよ。私、飛んできたわよ。」
「えっ?」
俺は目をこすりながら美咲ちゃんを見つめ直した。すると、背中には折り畳んだ白い羽根らしきものが付いているように見える。
「どういうこと?」
「あー、一週間仕事で缶詰めになっていたからネットニュースとか見てないのね。先週から、羽根が生えて飛べるようになった人がたくさん出てきたのよ。私もそうなんだけどね、ほら。」
美咲ちゃんは羽根を広げて見せてくれた。それは、幅4mくらいはありそうな巨大なものだった。
「・・・・」
俺は美咲ちゃんの羽根を見て言葉を失った。美咲ちゃんは、そんな俺の驚きに構わず、話を続けた。
「この1週間、テレビもネットもこの話題で持ちきりなの。どっかの大学の教授は、羽根が生えるなんてありえないし、生物学的に人は飛べないので、これは一種の集団催眠みたいなものだって言っていたわ。本人は羽根が生えたと思い込み、周りはその人が飛んでいると思い込むってことね。それで、この現象をウイング・シンドロームって言うらしいの。」
「ウイング・シンドローム、症候群か・・・」
俺はつぶやいた。
「一回飛んでみれば、すぐに間違いって分かるんだけどね。羽根が生えない人は飛べないからね。」
「はぁ、そういうものなんだ・・・」
俺は理解できないまま、あいまいな返事を返した。
「それはそうと、どこに食べに行く? 疲れているからスタミナの付くものがいいかな。君も羽根が生えてれば一緒に飛んで行けるのにね。ま、歩いていける範囲で考えないとね・・・」
美咲ちゃんは公園の出口に向かって歩き出した。俺は美咲ちゃんについて行きながら、なんとなく背中がむずがゆくなってきていた。
おしまい
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