分身

分身
                                -修.

 ベッドに腰かけた俺の横に俺が居た。

 俺と同じスウェットを着てベッドに腰かけている。髪はぼさぼさ、なんだかやつれて見える。最初は鏡に映った俺かと思った。しかし、ベッドの上に鏡などあるはずがない。

 昨日の歓迎会で飲みすぎたせいだろうか。いや、しかし、新入社員がよく歓迎会に来たものだ。最近は、飲み会に誘ったとしても、だいたい「これは業務ですか・・・」なんて反論されて撃沈されるのではないだろうか。

 待て、待て、そんなことより、もう一人の俺は何だろう。実体があるのか? そもそも俺なのか? 俺のそっくりさんかも・・・・

 そういえば、飲みすぎで頭が痛いので、会社に行くのが面倒くさいなー、と思っていたところだった。こういうときは、例の青い猫型ロボットが出してくれる道具で、俺のコピーを作って、俺の代わりに会社に行ってくれればいいのに、と思っていたんだ。だから現れたのだろうか。そう考えるとつじつまは合う。

 いやいやいや、青い猫型ロボットなんていないし、そんなことを思っただけでコピーが出現するものだろうか。

 しかし、俺同士が見つめあった状態では何も進まない。俺はとりあえず話しかけてみることにした。
「君は俺?」
 俺が話すのと同時に、向こうも同じ言葉をしゃべったようで、ユニゾンになってしまった。

 どうやら二人とも全く同じ思考をしているらしい。とすれば、同じ考えで、同じ言葉を同時に発してしまい、会話は成り立たないだろう。しかし、俺がこの状況を打破するアイデアを考えれば、向こうも同じことを考えるということではないだろうか。

 俺は、さっそくアイデアを考え始めた。俺の、会社に行きたくない願望からコピーが出現したのだから、コピーに会社に行ってもらうべきだ。しかし、俺と同じ思考であれば、あちらは俺をコピーと思っているだろう。向こうの俺に「おまえはコピーだから、会社に行け」と言っても、きっと反論されるだけだ。

 これは、くじしかないだろう。割りばしに黒丸でも書いて、空き缶に入れてくじにする。黒丸が出た方が出社、もう一人は家でごろごろ。くじを作るのは、キッチンに近いコピーの俺だ。コピーが家でごろごろしていて、オリジナルの俺が会社に行くのは本末転倒のようだが、自分の性格を考えると仕方がない。喧嘩しても勝負もつかないだろう。

 俺が考えをまとめた瞬間、コピーの俺がくじを作り始めた。やはり、二人の考えは全く同じらしい。何の調整も必要ない。

 そして、早速、俺からくじを引いた。黒丸はない。コピーの俺は何も言わないものの、明らかに残念そうに出社の支度を始めた。

 スマホは家に置いておくことにした。万一、コピーの俺が通勤途中や会社で消えてしまって、スーツと下着とカバンだけが残った場合、スマホの回収が難しいと考えたからだ。

 コピーの俺は小さく「行ってきます。」と言って出ていった。
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