サルベイジャー

 巧が黙り込んでいると、001が話しかけてきた。
「何か追加の質問、あるいは命令がありますか?」
「あー、えーっと・・・」
 巧が言いよどんでいると001が話を続けた。
「質問あるいは命令がないようですので状況を報告します。現在、周辺を警戒中ですが、北方1000mに2足歩行型AI兵器を探知しております。あと10秒で敵の射程に入ります。自動防衛モードに移行します。巧司令も身を隠してください。」
「えっ・・・」
 巧はとっさに瓦礫のかげに転がり込んだ。その直後、頭上を閃光が走った。レーザービームだろうか・・・。まだ空間に舞っている埃のせいか、光芒が見える。埃のせいで多少は威力がそがれているだろうが、当たっていたらただでは済まなかっただろう。
「やばっ!」
 巧が001のほうを見ると、すでに001は10mほど移動して着弾を回避したようだった。動きが早い・・・。まるでレーザーの発射方向が分かっているような・・・。いや、もしかすると・・・。

「報告、乗っ取り完了しました。」
「えっ・・・」
 巧はうすうす予想していたが、まさか本当に乗っ取ってしまったのか。確かに、敵からの攻撃はレーザー1発で止まっていた。巧は信じられないまま、瓦礫から北のほうを望むと、遠くから2足歩行型のAI兵器がこちらに歩いてきていた。

「巧司令、乗っ取ったAI兵器の設定を、001配下とするか、独自個体とするか選択ください。」
「どういうこと?」
「001配下とした場合、巧司令から001への命令に従い、001が命令を解釈して配下のAI兵器を制御します。独自個体とした場合、巧司令より個別に命令を受けます。ただし、この機体には音声認識機能がありませんので音声命令ができません。このため001配下をお勧めします。」
「ああ、じゃあそうしてくれ。」
「了解。」

「ん?」
 今更ながら巧は気づいた。現在、俺の命令を聞くAI兵器が2機居るってことなのではないだろうか。さながら、『巧』小隊ってところだろうか。次にAI兵器に遭遇しても001が乗っ取ってくれるなら何も怖くないのでは・・・。しかし、前回はやられているし、今回もレーザー攻撃を受けているため、完全に無敵ということでもないのだろう。

 しかし、この2機が護衛してくれるなら、安心して難民キャンプに帰り着けるのではないだろうか。そして、2機のAI兵器を売って大金持ちになれるのでは・・・。巧は妄想が止まらなかった。しかし、一方で、難民キャンプでの暮らしが長い巧は疑心暗鬼にならざるを得なかった。

 難民キャンプは善人の集まりではない。2機のAI兵器を引き連れて難民キャンプに戻るなんて目立って仕方ない。そして、それを金に換えたことが知れ渡れば、金目当てに殺される心配をしなければならないだろう。何かいい手はないものか。巧は助けを求めるように2機のAI兵器を眺めた。しかし、AI兵器は沈黙したままだった。

 難民キャンプでの自分の身の安全を最優先するなら、この2機はここに残して帰るしかないだろう。2機とも巧の命令しか聞かないようだし、乗っ取り機能の凄さは見せつけられたばかりだ。敵にやられてしまう可能性もあるが、もしかしたら次に来る時まで生き残っているかもしれない。一旦、難民キャンプに帰って、何ができるか考えてみよう。
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