虹の贈り物

 ルーリ達は雑貨を広げた板を取り囲むように老婆に近寄った。老婆は頭巾の下の深くしわの刻まれた顔にわずかに微笑みを浮かべ、おもむろにカードを子供達の中に差し出し、裏返して見せた。そこには、不思議な模様が浮かんだり、消えたりしていた。

 「ほら、見てごらん。模様が浮かんでいるだろう。時間が経つにつれて変化するんだよ。また見る日によっても違う。どうだいおもしろいだろう。」

 ルーリ達3人はうなづくのも忘れて、カードをじっと覗き込んだ。
 「すごい。初めて見た。」
 しばらく経ってアンツが声をもらした。
 「ぼくも初めて見た。」

 ルーリも答えた。横でシアンもうなずいた。子供達の心はすでにこのカードを買うことを決めつつあった。南国のくだもののことなど吹き飛んでしまっていた。

 もしここで買わなければ二度と見ることさえできないという辺境の鉄則を皆よく会得していたのだ。

 そのとき時を計ったように老婆が値段を口に出した。その値段は直前まで見ていた南国のくだものよりむしろ安い金額だった。

 「買った。」
 ルーリもアンツもシアンもほとんど同時に叫び、お金を握った手を差し出した。皆、ほかのふたりが買うのか買わないのかわき目もふらず同時にお金を出した。そのカードは、彼等にとってそれほど珍しい貴重なものだったのだ。

 「よしよし、わかった。3人とも買うんだね。ちょっと待ってくれよ。」
 老婆は金を受け取ると、自分の座っている後ろの方から小さな箱を取り出した。そしてその中から3枚カードを取り出して子供達に配りながら言った。

 「きらきら光る方をようく太陽に当てるんだよ。そうすると模様が浮かんでくるから。」
 3人は虹の光を見つめながら、小さくうなづいた。

 その後3人は、ルーリの父親の荷車に早々と戻ってきた。いつもなら、太陽がかなり傾くまで市に出ている店々を覗いたり、町のあちこちを探検したりするのだが、その日は手に入れたカードをじっくり眺めたいという一心で早く戻ってきたのだ。

 3人はいつまでもルーリの父親の横に並んで座ってカードを見つめて過ごした。そして村への帰り道も荷車の後ろに腰掛けてずっとカードをながめていた。
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