虹の贈り物

 ところがちょうどそのとき、低い声が後ろから響いた。
 「坊やたち。おもしろいものはいらないかね。」

 ルーリ達は市の喧騒の中にあってもその声をはっきり聞くことができた。その突然の声にルーリたちは驚いていっせい振り返った。
 そこには、まわりの店よりかなり狭く、高さもいっそう低いテントがあった。そしてそこには頭巾を深くかぶり、土色の布をまとった老婆がテントの中央に座り、狭いスペースに板を敷いて色々な雑貨を広げて売っていた。そして老婆の手には銀色に光るカードが握られており、老婆は手を動かして子供達に虹色の輝きが見えるようにしていた。

 「ほらきれいだろう。やすくしとくよ。」
 ルーリ達は老婆の低い声に驚いたが、そのカードにはもっと驚いていた。それは初めて見る光だった。皆、空の虹は雨上がりによく見ていたが、カードが虹色に光るのは初めて見たのだった。

 「きれい。」
 シアンが思わず声をもらした。都会に住む子供達であればプリズムやホログラムなど手にいれることは可能だろうが、ここは辺境。

 そのような日常生活に必要ないものはどこにも売ってなかったし、だれも持たなかったし、まただれも知らなかった。3人の子供達はもっとよく見ようとそのテントへと近づいて行った。

 「どうだい、お嬢ちゃん。とってもきれいだろう。もっと近づいてみな。このカードは虹色に光るだけじゃないんだよ。」
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