虹の贈り物

 前の市でも、ルーリと、女の子の友達のシアンと、男の子の友達のアンツはいつものとおり、父親が荷車を止めて商売を始めるやいなや、さっさと荷車を離れ、市場の様々な店々を物色始めた。

 市場にはルーリの家でも作っているような野菜やくだもの、チーズなどの乳製品、服や帽子、手袋、家具や本、何よりもルーリたちにとっては重要なおもちゃ、お菓子などいろいろなものが売られていた。

 子供たちの小遣いは限られているので後悔しない買い物をするためには、子供たちはできるだけ多くの店をまわり、その市でもっともおもしろそうなもの、あるいはおいしそうなものを決める必要があった。

 子供たち3人は、大柄の体に真っ赤なシャツを着てひげをはやした仏頂面のおじさんが板の上にくだものを広げているテントの前で立ち止まって話し込んでいた。

 「どんな味がするのかしら。ねえねえどう思う。」
 女の子のシアンは自分が見つけた南国のくだものにとても興味を示してた。それは見たこともないくだものだった。そのくだものは子供たちの頭くらいの大きさがあり、色は真紅で、まわりにはとげとげがある。

 くだものには「南の島トルメーニで採れるダギニル」と書いてあり、値段もなんとか子供たちの小遣いでも買えそうなものであった。
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