虹の贈り物

 次の日は村は殺気だっていた。町や、隣の村々から多くの人々が駆けつけていた。そしていつもの午前中の学校は、今日はお休みだった。大人達はそれどころではなかったのだ。

 ルーリは早々と山羊達を連れて丘を目指した。しかし丘へ続く道は、人や馬でごったがえしており、山羊達をまとめるのは一苦労だった。

 そしてルーリが丘へ着くと、そこには昨日の宇宙船だけでなく、他に3隻の宇宙船らしきものが着陸していた。そしてまわりには多くの大人達が忙しそうに右往左往していた。

 ルーリはその集団から遠くはなれて、山羊達を連れて宇宙船のまわりをまわった。そして、ルーリはアカバを見つけて、手を振って呼んだ。

 「アカバさーん。」
 アカバは、他の大人達との話を中断し、ルーリの方へ向かってきた。
 「やあ、おはようルーリ。昨日は本当にありがとう。何度お礼を言っても言い足りないぐらいだ。」

 ルーリは照れ臭そうに微笑んだ。
 「そうだ、ルーリ。これ返すよ。ありがとう。」
 アカバの手にはカードが握られていた。ルーリは昨日のどさくさの中で、カードのことをすっかり忘れていた。

 「ルーリ、ぼく達はこの星の反対側に入植することになったんだ。何日かしたら、この星の住人さ。よろしくな。じゃあな。」
 アカバは手を振りながら去って行った。

 ルーリはその姿を見つめながら、手を振り返した。ルーリは、珍しい宇宙船をしばらく眺めていたが、大人達は忙しそうでかまってもらえそうになかったので、その丘を後にして岩棚のある南斜面へと向かった。
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