虹の贈り物

 ちょうどその時、ルーリは遠くから丘を上ってくる馬の一団を認めた。どうやら、それはルーリの父親と村の大人たちのようだった。ルーリは「とうさーん」と叫びながら、アカバの手をふりほどいて駆け出した。

 イリウスは、アカバを見て話しかけた。

 「ひとつ聞いていいか。」
 「なんだ。」
 「アカバはどうしてカードのことを知っていたんだ?」
 「ああ…。」

 アカバは宇宙服の前のシールを開いて下のシャツに手を入れ、何かを探し始めた。そして宇宙服から出てきた手にはルーリが持っていたのと同じカードが握られていた。

 「これさ。」
 アカバは照れ臭そうに両手に持った2枚のカードを見せた。
 「おじいちゃんの形見なんだ。100年以上前のものさ。でも、ちゃんと動くんだぜ。」

 イリウスは信じられないといった表情でカードとアカバの顔を交互に眺めた。
 「アカバ、自分がカードを持っているんだったら、最初からそれを使えば良かったんじゃないのか?俺は初めて見たぞ。」

 「いや、隠していたわけじゃないんだが、宇宙船の中じゃ他に持っている人がいないから交信できないし、使う機会がまったくなかったんだ。

 第一、このカードは長距離通信はできない。せいぜい2ブロックぐらいが関の山さ。だから普通はいっぱいアンテナを立てないといけないんだ。

 こんな辺境にアンテナがわんさか立っているなんてありえないだろう。それに、100年以上前の装置だぜ。こんなところで使えるなんて思うわけないだろう。」

 「ほー。」
 イリウスは怪訝な表情でうなずいた。
「それになにより、宇宙船の中じゃ、たいして充電できないんだよ。太陽がないんだから…。」
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