虹の贈り物

 しかし、通信の本当の到達距離は、アカバもイリウスも、誰も想像していないものだった。山々の中腹からアカバが発した緊急通信は、ルーリの村に届いただけではなかったのだ。

 アンツとシアンのカードは、緊急管制回線のオープン命令により、ルーリのカードと同じ状態になった。つまり、言語が汎銀河第3言語に変わり、緊急通信モードとなった。

 各カードに記憶された内容は削除されなかったものの、緊急通信を中継する以外の動作は一切停止した。そしてアンツとシアンのカードは、ルーリのカードから送られてきた緊急通信を最大出力で再発信していたのだ。

 信じ難いことに、アカバが発した緊急通信は、何人も何人もの子供達のカード通して100キロ以上離れた首都まで届いてしまっていた。

 たまたま、発信時間が日暮れ前で、また、たまたま中継経路がすべて太陽が当たっていたのと、そしてなによりカードの持ち主が純粋な子供達であったのが幸いしたのだ。
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