ちょうど同じころ、村の反対側のアンツの家でも同じ様なことが起こっていた。アンツは、ちょうど牛たちを牛舎から牧草地に出しているときだった。

　シアンと同じようにアンツも真っ先に父親を呼んだ。そしてアンツは屋根の上に上ってカードを高く空に差し上げた。そしてアンツの父親もルーリの家に駆け出した。

　植民星ＣＤＦ２９４に初めて人類が降り立ってから、すでに１００年が経過しようとしていた。すでに２世代以上の世代交代があり、入植のときの記憶をもっているものは植民星ＣＤＦ２９４には存在していなかった。

　しかし、植民星ＣＤＦ２９４の住人は皆、たとえ辺境にあっても、自分たちがはるかに遠い惑星から１００年近くもの歳月をかけてこの星にやってきたことを自負していた。

　そして、あらゆる町に、村には、宇宙移民管理法の法典が保管してあった。それは、ルーリの村でも例外ではなかった。ルーリの家に集まった大人たちは、村長の家から法典を借りてきた。

　そして、非常事態８７０１の意味を即座に知った。非常事態８７０１とは、移民用大型航宙船の遭難、緊急着陸及び移民許可要請及び救援活動要請を意味していた。

　村では即座に２つのチームが編成された。そして村にいる限りの馬が用意された。１つのチームはルーリを探して山へ向かい、もう一つのチームは町へと向かった。

　このような緊急事態では最速の手段へ上位機関への連絡が義務づけられていたのだ。すでに日は傾きつつあり、町へつくのは日没をすぎてしまう。

　落馬や木の枝との衝突が危険視されたが、誰も反対するものはいなかった。移民用大型航宙船の多くの人命を救うことは何よりも重要視されたのだ。そして２つのチームは連絡から１時間も経たないうちに出発した。