虹の贈り物

 「状況がよくわからないが、坊や、いやルーリ。どうもありがとう。俺からも礼を言うよ。右手を出しな。これは握手っていうんだ。」

 ルーリは、初めての握手におそるおそる右手を差し出した。アカバはその右手を宇宙服のグローブごしに強くでつかんだ。そしてイリウスの方を振り向きながら、言った。

 「もしかしたら、うまく行くかも知れない。ちょっと時間をくれ。」
 アカバはルーリの手を離し、カードに複雑な模様を描き始めた。カードからは時々ピーとかガーとか音が出た。ルーリは初めてカードから音がでるのを聞いた。

 この数日間いろいろカードをいじっていたが、音が出たことはなかった。アカバは何かを記憶をたどるように、口でもごもご言いながら、作業を続けていた。

 「強制解除命令。i+e$a5&64@aioheai。」
 「緊急管制回線オープン。q7uhr08ije。」
 アカバはカードから顔を上げ、イリウスに言った

 「彼の村まで3時間くらいと言ったな。距離にして10キロくらい。このカードの通信限界距離だ。普通はアンテナで中継して使うものなんだ。ルーリの友達がちゃんと太陽に当てて充電してくれてることと、外に出ていることを祈ってくれ。」

 次にアカバはルーリの方を見て言った。
 「近くの町まで荷車で4時間位って言ってな。君の村と町の間にはいくつか村があるのかい。」

 ルーリは少し考えこんでから返事をした。
 「3つぐらいあるよ。いつも荷車で通るもん。」
 「上等だ。イリウス、祈りを忘れるな。いくぞ。」
 アカバはカードを口元に近づけ、先程ルーリが指差した村の方を向かって大きな声で離し出した。
36/47ページ
スキ