虹の贈り物

 「ルーリ、よく聞いてくれ。このカードはただの薄っぺらい銀色の板じゃないんだ。これは惑星ラーメルで作られたカード、いや、何というか、電話、は知らないか。

 えーと、つまり遠くの人とお話しのできる機械なんだ。それだけじゃなくてもっと色々な機能をもっているんだが、とりあえず、ぼくらが探していたものなんだ。」

 ルーリは、アカバの言っていることがあまり理解できなかった。そもそも通信機の概念がないのだから、ルーリにとってはなぜ遠くの人に声が届くのか判らなかった。雷のようなとっても大きな音でもでるのだろうかとルーリはいぶかしんだ。

 「それで、君に確認をしておきたい。いまこのカードはラーメル語表示になっている。これを僕らの汎銀河第3言語に変えさせて欲しいんだが、いいかい。」

 ルーリには何のことかわからなかったが、アカバがとても真剣な表情で頼んでいたので、わからないなりに重要なことと思ってうなずいた。

 「ありがとう。でも、まだお願いがあるんだ。このカードはプロテクトがかかっている。つまり重要な情報がいっぱい入っているかもしれない。たぶん君にとっては重要な情報ではないと思うが。でもその状態では交信ができない。そこで強制オールクリアしてもいいだろうか。」

 ルーリは話についていっていなかったが、とりあえず答えた。
 「おじさんの好きにしていいよ。でも終わったらちゃんと返してね。」
 「わかった。約束するよ。どうもありがとう。」

 アカバは握手をしようと右手を差し出した。しかし、ルーリの惑星では握手の習慣はなく、差し出された右手に反射的に一歩下がってしまった。

 そのとき、用心深くエアロックにぶらさがりながら、地面に降り立ったイリウスがアカバの後ろから声を掛けた。
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