虹の贈り物

 しかし、アカバはイリウスの言葉に耳も貸さずにそのカードを眺め続けた。そして、目を離さず、低い声で声で尋ねた。
 「ルーリ。お友達もみんなこれをもっているのかい。」

 ルーリはかなり離れた位置から答えた。
 「そうだよ。さっき言っただろ、アンツもシアンも一緒に買ったんだ。おばあちゃんが売ってたんだ。他の子供も買ったかも知れない。ちゃんと返してよ。」

 ルーリはせっかく手に入れた宝物を奪われることだけが気にかかってしかたなかった。アカバはそんなルーリの様子を気にもとめず、カードの模様を眺めたり、さわったりしていた。

 「アカバ、どうしたんだ、なんだよ。説明しろよ。」
 「わかったよ、イリウス。説明するよ。これはアルフレッド社製カードだ。」

 「アカバ、カードは見れば判るよ。どう見たってカードじゃないか。」
 「違うんだ。よく聞いてくれ。カードというのはインサルタットシティネットワーキングコンピューターゲートウエイ用のPDAのことなんだ。判るか。」

 「そうだったのか・・・、と言いたいところだが、全然わからん。インサルタット云々てなんだ。そのあとのP何とかもわからん。わかるように説明してくれ。」
 「えーい、面倒くさい。ちょっと黙ってろ。」

 アカバはすっかり興奮していた。そしてこともあろうに宇宙着たままエアロックから地面へと飛び降りた。たかだか数十センチとはいえ、この植民星CDF294の重力とアカバ達のカルシウムの少ない骨では骨折は免れないと、イリウスは確信した。

 しかしアカバは幸運にも森の柔らかい土に助けられて骨折はしなかった。アカバは地面に降り立つや否やルーリの元へ駆け寄り、ルーリにカードを見せながら説明を始めた。
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