虹の贈り物

 「何者だ。何があったんだ。」
 「エアロックを開けたら少年が立ってたんだ。3時間ほど離れた村から来たそうだ。両親と妹と村に住んでいる。山羊だと思うが、かなりの数の動物を引き連れている。少し話したが、村には通信機はなさそうだ。以上。」

 人間、緊急事態では案外冷静に話せるものだと、イリウスは自ら多少関心しながら報告口調でしゃべった。

 エアロックの内扉が閉まり、再び気圧の調整をするためにはかなりの時間を要した。呼吸が正常に戻るに連れて、アカバもやや冷静さを取り戻し、イリウスの言葉の意味を検討した。

 「3時間か。我々の体力では歩けないだろうな。そして、その村に通信機もないとすれば、あまり事態が好転したとは言えないな。」
 「まあ、そう言うなよ。着陸早々、お出迎えがあっただけでも幸運だと考えるべきだろうな。まあ、アカバも一緒に話してみてくれ、きっと何か解決策が出てくるさ。」
 「そうだな。」
 アカバは、興奮してエアロックに駆け込んだことをわずかだが後悔しつつ答えた。
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